はじめに
とんかつ専門店「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングス(HD)。ボリュームたっぷりの“ガッツリ系”料理でこれまで拡大してきましたが、子会社のフィルドテーブルでスタートさせる新業態は、毛色が異なるようです。
1月31日に東京・渋谷にオープンするパスタ店「東京たらこスパゲティ」は、女性がターゲット。同社がたらこスパゲティの店を出す背景には、どのような事情があるのでしょうか。
タピオカ入りの生パスタ
「東京たらこスパゲティ」は店名の通り、たらこを使ったメニューを前面に出したパスタ業態。「進化系たらこスパゲティ専門店」を謳っており、「検索して出てくるものではなく、見たことないような『たらこスパゲティ』を目指した」と、アークランドHDの営業担当者は語ります。
たとえば「炙りたらこのお出汁スパゲティ」(890円、税別、以下同)は、そのまま食べるだけでなく、カツオや昆布などから取っただし汁を注ぐと、スープパスタのように食べられる仕掛け。自分でカスタマイズできる要素を加えることで、女性にアピールする狙いがあるといいます。
麺は1分でゆで上がる生パスタを使用。通常の麺では温かいだし汁をかけるとのびてしまいますが、北海道産の硬質小麦「ルルロッソ」を使用し、さらにタピオカ粉を練り込むことで、「もちもちの食感」をゆで上がりから20分経っても味わえるようにしました。
スパゲティに使用するたらこは、店内でタレに漬け込んでおり、全体をじっくりと焼き上げてから、ガスバーナーで表面をあぶって提供します。「客席からも調理の過程が見えて、ろばた焼きのように楽しめる」(担当者)。
ほかにも「とろろ明太 大葉のソース」(1,190円)、「白味噌と豆乳の明太クリーム」(990円)など、一般的なたらこスパゲティにひと手間加えたメニューを取りそろえています。
女性が入りやすいファストフードに
カウンター席を中心とした同店のコンセプトは「頑張る女性を応援する全力飯。」。20代後半〜40代前半の女性がメインターゲットで、客単価は約1,000円を想定。たらこに合うアルコールや小鉢のメニューも用意しました。
「女性向けに振り切った」という同店ですが、アークランドHDは、とんかつ、からあげ、肉めしなど、男性ターゲットの業態を得意としている企業。どうして女性向けのパスタ業態を始めることになったのでしょうか。
働く女性などのニーズが拡大する中で、「女性が入りやすい和食のファストフード店があまりない」ことに着目した、と広報担当者は語ります。「働いている方や育児中の女性など、頑張る女性がお腹を空かせた時に満たされてほしい」。
たらこスパゲティといえば、発祥と言われる「壁の穴」がありますが、同グループとは前述のようなひと手間加えたメニューで差別化を図る方針。かつやでリピーターを生み出している紙の割引券のノウハウを転用して、東京たらこスパゲティでも配布する予定です。