はじめに

18年ぶりの惨状から2020年は改善へ

2019年12月3日に公表された最新の統計予測によると、2018年後半辺りから世界的に不透明感が急速に高まった中で、2019年通年での半導体売り上げは前年比▲12.8%で2ケタのマイナス成長になる、との推定値が示されました。

半導体市場

2ケタのマイナスは2001年以来ですが、この時期はITバブルが崩壊してハイテク産業がボロボロになった時期です。2019年はこの時期に匹敵するほどの状況だったといえます。

しかし、2020年については、状況は改善すると予想されています。世界の主要国が5G(第5世代移動通信システム)の開始を相次いで発表しているほか、データセンター関連投資の回復や次世代ゲーム機の登場などもあり、前年のマイナス成長からプラス成長に転じる、との予測が示されました。半導体の復調は台湾経済にとって好材料といえるでしょう。

実際、直近発表された2019年12月の台湾の鉱工業生産指数では、前年同月比+5.99%と2018年10月以来の高い水準となりました。GDP(国内総生産)統計など、その他の経済指標から見ても台湾の景況感は明らかに改善しており、景気の好転は今回の選挙において蔡政権にとっての追い風になった、という側面もあります。

中長期では追い風が継続か

とはいえ、台湾経済の先行きが「100%視界良好」というわけではありません。

中国で発生した新型肺炎問題が急速に世界に拡散したことで、グローバル企業、特に中国企業の生産活動に大きな影響を与えています。台湾の電子部品関連企業は世界のサプライチェーンに組み込まれているケースが多く、中国の生産遅延・縮小などによって台湾経済がどの程度、影響を受けるかは未知数です。

現状は不安材料ばかりで現時点では楽観的な見方はできませんが、今回の騒動によって中国のIT関連投資強化の方針や世界各国の5G推進の方針が大きく変わるとは考えづらいはず。長い目で見れば、台湾に対して電子部品の需要増をもたらすと予想されます。

<文:市場情報部 アジア情報課長 明松真一郎>

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