はじめに
トラウマがよみがえる
シュウコさん(32歳)は、生まれてすぐ両親が離婚。2歳のときに母が再婚して継父と暮らすようになりました。
「この父親が、すぐ手を出す人でした。母にも暴力をふるっていたし、それがだんだん私にも飛び火するようになって。でも反省はするんですよね。私に暴力をふるい、母が全力で止めにかかると母を投げ飛ばす。そして時間がたつと、『シュウコ、ごめん。もうぶたないからね。今度、おまえがほしがっていた人形を買ってあげるから』と言う。だけど人形を買いに行く前に、また暴力」
結局、母は彼女が小学校に上がる前に離婚しました。でもシュウコさんは、それ以来、「~してあげる」という言葉に過剰に反応するようになってしまったのです。
「高校を出て就職、仕事をしながら大学の二部に通って卒業しました。それでも男性恐怖みたいなものは治らなくて、カウンセリングにもかかって、ようやく少しずつ人間関係を築けるようになったんです。それでも27歳くらいのときにつきあった人が、ふとした拍子に『誕生日にプレゼント買ってあげる。何がいい?』と言ったことがあって、それでトラウマがフラッシュバックしたこともありました。彼には継父に暴力をふるわれたことなど話していたのに……」
彼とはつきあえなくなり、そのまま自然消滅のような形で別れてしまったと言います。おそらく彼には彼女のトラウマがどれほど深いかわからなかったのでしょう。もっときちんと彼女の話を聞くべきだったのですが、お互いにそこまで踏み込めなかったのかもしれません。
人それぞれですが、男性の「買ってあげる」に対しては、喜ぶ人から「下に見られている」と不快感を覚える人、さらには傷つく人まで反応は多種多様です。もし不快感を覚えるなら、自分の中のどんな気持ちが不快だと感じるのかを自己分析して、彼にもきちんと告げておいたほうがいいのではないでしょうか。