企業買収は“負の遺産も買う”こと

意外に思われる方もいるかと思いますが、たとえ売り上げがたくさんある企業であってもタダ同然で買収される例は珍しくありません。たとえば、債務超過に陥っていたり、赤字が解消される見込みが薄かったりするような経営危機に瀕する会社は、タダ同然で買収されやすい。むしろ、タダでも高い場合すらあるのです。

印象的な例は、RIZAPグループの収益悪化の原因にもなった「経営不振企業のM&A」でしょう。

同社は、赤字が継続していたスポーツ用品店のB&Dを1円で買収するなど、経営が不調な企業をタダ同然で買収することで利益を上げるビジネスモデルを推進していました。しかし、経営の改善を順調に進めることができず、2019年3月期決算では大幅な赤字に陥ってしまいました。

このように、買収後の利益改善やコストカットがうまくいかなければ、買収された会社の赤字が買収した会社にそのまま乗ってくることになります。それだけでなく、買収した会社は原則として、買収された会社の借金を肩代わりしなければなりません。借金が1億円ある会社を1円で買収してしまうと、1億円の返済義務がくっついてきてしまいます。

このように、実態のある企業がタダ同然で買われるということは、実質的には、企業価値がマイナスで、本来であれば買収される側がお金を払って買ってもらう状態になっている、といっても過言ではありません。

オリガミの赤字は倍々で増加

では、Origamiの業績はどのようになっているでしょうか。2012年に設立した同社は、競争が激化する2018年より前からQR決済サービスを推進してきましたが、体力のあるPayPayなどのライバルとの競争激化で疲弊がみえていました。

2016年12月期には6億8,900万円だった営業赤字が、2017年12月期には13億0,600万円、2018年12月期には25億4,400万円と、赤字の幅は年を追うごとに倍々となっていました。

Origamiの登記簿情報によれば、2012年から2019年までの7年間で101億円程度の資金を外部から調達したとみられます。しかし、2016年から2018年までのわずか3年間で、同社は調達資金の半分近い45億3,900万円もの営業赤字を出しています。

そうすると、2019年12月期も多額の赤字を計上している可能性が高く、Origamiの手元に向こう数年の事業を継続するだけの純資産が残っていることは考えづらく、経営破綻となった可能性が十分に考えられます。したがって、メルカリの買収額がタダ同然であったとしても、うなずけます。

メルカリはどう処遇する?

ただでさえ、足元の2020年6月期の第1四半期(2019年7~9月期)で70億円の赤字となったメルカリが、Origami買収によってさらに苦しくなる可能性は否定できません。そこでメルカリは、Origamiの強みであるユーザー基盤と、地方の信用金庫とのリレーションを早急にメルペイへ移行させると同時に、Origami側の人員を大幅に整理するでしょう。

メルカリ・オリガミ協業
メルカリが描くOrigamiとの協業イメージ

Origamiの赤字のほとんどは、広告費と人件費によるものと推測されます。同社が債務超過に陥っていなければ、コストの蛇口を締めるだけで、少なくともメルカリ本体に飛び火する可能性は低くなります。

つまりメルカリは、迅速なサービスの統合とOrigami従業員のリストラを推し進めていくことで、多くのユーザーをタダ同然で獲得する戦略なのではないか、と考えられます。

しかし、そもそもQR決済は成長過程にあり、どの会社も赤字体質です。そうすると、メルペイのユーザー増加は、短期的には依然として収益押し下げの要因になりかねません。そのため、今回の買収はメルカリの株価を大きく押し上げることにはつながらなさそうです。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>