はじめに

会社にとっては、出資者となる株主との対話を行う株主総会が最も重要な集まりです。一方で、会社の最高意思決定機関といえば取締役会です。

近年は取締役会のあるべき姿について、さまざまな議論がありますが、株主から経営を任された役員が会社の経営方針を定めたり、業務執行の決定をしたり、執行者の監督を行います。ですので、取締役会は会社経営のうえで最も重要な会議になるでしょう。

最重要会議ですから、取締役は当然、取締役会に出席する義務があるとされています。そこで、取締役会の参加率の開示と株価の関係を調べてみました。


取締役が取締役会に出席する意味

実は、会社法では「取締役の出席義務がある」という明確な記述はありせん。それに、取締役会の決議は「議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数をもって行う」とされています。ですから、取締役の半分を超えるメンバーが参加すれば、取締役会は成立します。

取締役の中には、出張で時間がとられるなど通常業務が優先となり、出席できないケースもあるかもしれません。また、経営陣のトップといえば社長です。社長としても自分の立てた経営方針をすんなり通したいと思えば、会議に多くの取締役が参加するより、少人数で承諾してもらったほうがありがたいかもしれません。

しかし、これでは経営に関する政策が十分に議論されないまま、実行に移されてしまう危険性があります。また、一部トップの都合の良い経営が行われるかもしれません。

そこで近年は、会社と利害関係を持たない「独立社外取締役」への期待が高まっています。公平・公正な目線で会社の業務が本当に株主のためになっているのか、チェックしてもらうためです。

社外取締役の多寡で株価は上がらない

東京証券取引所では、上場企業の原則となる「コーポレートガバナンス・コード」をまとめています。この中で、「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」に加え、「少なくとも取締役のうち3分の1以上の独立社外取締役を選任する」ことを示唆しています。

とはいえ、昨年9月19日の配信記事「社外取締役が多ければ良いわけじゃない?会社法改正と株価の盲点」では、単純に独立社外取締役の人数が多いだけで投資家から評価されて株価が上昇するわけでないことが示されました。

今回のテーマも、それに関連する話題です。いくら独立社外取締役が多くても、そもそも取締役会に参加しなければ、その機能が果たされないからです。

会社法では、社外取締役の出席率などの開示を会社側に義務付けています。そして近年では、前年の出席率が75%未満の場合には株主側から翌年度の再任が反対されるようになりました。取締役会は上場企業では毎月開催されるケースが多いですが、社外取締役も毎回出席を前提として役割を果たしてもらおうとされています。

どの程度の取締役が出席しているか

しかし、このような出席率の開示義務は社外取締役が対象となっています。何だか変な気もしますが、これは社内の取締役は出席が当たり前なので、あえて開示する必要がないということも背後にあります。

それでは、社内の取締役は実際に参加しているものなのでしょうか。こうした疑問に答えるために、CSR報告書やウェブサイトを通じて、社外・社内問わず、取締役会の参加状況を開示している企業もあります。

企業の開示内容を見ると、ほぼ全員が参加しているケースも少なくありません。参加率が高いからこそ開示できるのでしょう。そこで、このように出席率を開示している企業の株価パフォーマンスを調べてみました。

東証1部企業を対象に毎年1回、9月末時点で取得できる情報を使って、CSR報告書などを通じて社内・社外取締役の取締役会参加状況を「開示している企業」と「そうでない企業」を分類します。2006年9月末を基準に、それぞれの月次株価収益率の平均を比較しました。

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