はじめに

世界規模で猛威を振るう新型コロナウイルスのショックに見舞われた、日本の株式市場。3月6日の日経平均株価は前日比579円安と下落しました。

同日の値下がり銘柄数は2,114を数えたのに対し、値上がり数はわずか40。ほぼ全面安ともいえる展開の中で“逆行高”となったのが、コンビニエンスストアを軸にスーパー、デパート、外食など幅広く展開する大手流通グループのセブン&アイ・ホールディングスでした。


巨額買収は“高値づかみ”だった?

セブン&アイの同日の株価終値は3,842円。前日比214円高(+5.9%)で取引を終えました。上昇のきっかけになったのは、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニ併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」の買収を断念したと伝えられたことです。

買収の検討が表面化したのは、2月20日の米通信社による「スピードウェイ買収で独占交渉に入った」との報道がきっかけです。「買収提示額は約220億ドル(約2兆3,000億円)」で、「買収合意は来週にも発表の可能性があるが、最終決定には至っておらず、交渉は頓挫の可能性もある」などと伝えていました。

これに対して、セブン&アイは同日、「当社が発表したものではない」とのコメントを公表しましたが、株式市場ではセブン&アイ株への売り物が先行。終値は前日比376円安(▲8.8%)の3,920円と、大きく値を下げました。巨額での買収に伴う財務負担の増大を警戒した売りに押された格好です。

3月6日の急騰劇は“高値づかみ”への懸念が薄らいだためとみられます。実際、交渉でネックになったとされているのが、買収金額の高さです。格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは買収が実現した場合には、セブン&アイの信用格付けを引き下げる可能性を示していました。

物別れの裏に新型コロナの影

両社の交渉が物別れに終わった裏には、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響があった」との指摘もあります。

コロナウイルスの感染の広がりによる世界経済の減速で、需要が減少するとの観測が台頭。つれて、長期間にわたり米国景気を牽引してきた個人消費の先行きにも暗雲が立ち込めようとしています。こうした状況を踏まえると、セブン&アイ側が慎重姿勢を強めるのは当然ともいえます。

ただ、短期的にはセブン&アイの株価の追い風になったとしても、中長期の視点で考えれば、別の見方もできそう。稼ぎ頭となっているコンビニ事業の戦略の見直しを迫られる可能性もあります。同事業で米国は日本に次ぐ第2の市場。2019年11月時点での店舗数は世界で3万1,223。このうち、国内が2万1,002店で、北米が9,631店です。

同社の2020年2月期を最終年度とする中期経営計画には、「日米CVS(コンビニエンスストア)事業を成長の柱とし、経営資源を集中させる」と明記されています。2019年4月には中期計画の収益目標を修正。2020年2月期の国内コンビニ事業の営業利益予想については従来から110億円引き下げたのに対し、海外に関しては190億円引き上げました。

国内の下方修正は既存店売上高、粗利益率の伸び悩みなどが主な要因です。一方、海外の上方修正として会社側は、2018年1月に米スノコLPからコンビニとガソリンスタンド1,030店を31億ドル余りで買収したことによる効果の発現などを理由に挙げています。

<写真:ロイター/アフロ>

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