はじめに

日本の落ち込みは欧米より緩やか?

世界経済は当面深刻な景気後退が避けられず厳しい状況が続くでしょうが、日本は相対的に影響が抑えられると考えられます。新型コロナウイルスの感染拡大ペースは他国対比で抑制されており、WHOによると人口1,000人あたりの病床数は13.4と世界一位となるなど、医療のキャパシティも大きいです。

飲食など非常に大きな影響が出ている業種もありますが、経済活動の大部分は停止にまでは至っていません。消費増税によって新型コロナウイルスの感染拡大前から消費が落ち込んでいたこともあり、日本経済は4〜6月期にかけて3期連続のマイナス成長となる公算が大きいですが、景気の落ち込みは欧米よりも緩やかになる可能性が高いです。

リーマンショック時の2009年1〜3月期に日本は前期比年率▲17.8%のマイナス成長となりました。今後の状況次第ではあるものの、今回はそこまで大きな落ち込みは免れるかもしれません。

金融政策も大幅に強化されました。日銀は日本株ETF購入を当面は倍増させ、一日当たり2,000億円程度の買入れを実施しています。金利の引き下げ余地こそ乏しいものの、資産買入れに法的な制限がかけられている他国の中銀と異なり、日銀は財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受ければ柔軟な買入れが可能です。

中央銀行の緩和競争の舞台が金利から資産買入れに移りつつある中で、日銀には危機対応の余地がまだ残っています。

財政政策はどうなるのか

財政政策にも期待がかかります。各種報道によると、期限付き商品券の給付、旅行や飲食の助成などを含む総額30兆円、「真水」15兆円程度の景気対策が検討されているようです。日本の長期金利は、日銀によるイールドカーブコントロールもあって、0%近傍で推移しています。

今後、財政政策の拡大によって国債が増発されても、日銀が保有国債の増加額のめどを80兆円としている中では(2019年の実際の買い入れ額は20兆円未満)、増発分を消化する余地は十分にあります。2009年に麻生政権が策定した事業規模56.8兆円を上回る規模まで、景気対策を増額することも可能でしょう。

政策当局には積極的な対応が求められます。感染拡大の抑制および金融・財政両面で今後十分な対応がなされるようであれば、日本の資産に見直しの動きが出ることも十分考えられます。

<文:ファンドマネージャー 山崎慧>

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