はじめに
米国に比べて見劣りする所得補償
日本よりも大規模かつ迅速に経済対策を行っているのは米国です。家計に対して小切手送付などの生活費支援、失業給付金の上乗せなどで、GDP 比4%以上の規模で家計所得を直接増やす政策を打ち出しています。
これ以外に、政府歳出をGDP比2%拡大させ、また企業への税金の支払い猶予などが広範囲に行われています。米国と比べると、日本の対応は特に家計などへの所得補償の規模が大きく見劣りしています。今回の緊急経済対策を踏まえると、日本経済の先行きに全く期待できないでしょう。
そして、今回の日本政府の対応は、今の日本の最重要課題である新型コロナウイルス問題をより深刻化させかねないとみています。相応の生活費の補償がなければ、経済活動自粛に踏み出すことが難しい人が多いのが現実であり、新型コロナウイルス感染拡大に本気であるならそれと整合的な大規模な財政政策が必要でしょう。
今回の不十分な経済政策が、コロナウイルス感染拡大に歯止めをかける大きな障害になりかねない、と筆者は懸念しています。
<文:シニアエコノミスト 村上尚己>