はじめに

ひっ迫する小売店の経営

ベルリンで着物の販売店Aura(オーラ)を2店舗経営するアムンドラ・ガンテメーアーさんも、コロナ禍により売り上げに深刻な影響が出ていると言います。

「『アジアで新種のウイルスが流行っている』という情報が流れてきた頃から、客足が遠のくのを実感しました。着物=アジア=コロナウイルスという連想があったのかもしれません。イースター時期の売り上げに期待していたのに、コロナウイルスで全ての計画が無に帰しました」(ガンテメーアーさん)

オーラの店内オーラの店内

前述の記者会見においては、800m2以下の敷地面積の店舗は4月20日から営業を再開できるとの判断が発表されました。しかし、ガンテメーアーさんにとっては、あまり意味がありません。

買い物客の8割を観光者が占めるオーラは、営業を再開できても街に観光客が戻って来なければ売り上げは戻りません。ガンテメーアーさんは、1ヵ月以内に1店舗を手放すかどうかの決断を下す必要に迫られています。また、営業再開に際して店は消毒液とマスクを来店客に用意しなければならず、店側の負担は見過ごせません。

「(支援金についても)プレゼントされるお金ではないので、使途を記録しなければいけません。申請はしましたが、支援金が給付されても問題が先送りされるだけだと感じています」(ガンテメーアーさん)

コロナ禍ではできることをできる分だけこなす

こうした厳しい状況の中でも、それぞれに奮闘しています。ガンテメーアーさんの対策はオンラインショップです。「着物に馴染みのないお客さんにオンラインで販売するのは難しいですが、これまでも苦境を乗り越えてきた人はたくさんいます。今回もきっと大丈夫」と前を向きます。そして、「自分より大変な人がいることを考えれば、こういうときにこそ『連帯』の気持ちで助け合わなければ」と言い切りました。

ミンギさんも「設計のコンペが中止にならなかったのはありがたい」と述べ、主催者の柔軟な対応に感謝していると話します。今は、図面を引く作業に集中しているそうです。

2人に限らず、奮闘する姿はあちこちで見かけます。たとえば、マスクを製造するクリーニング兼裾上げ屋さん。病院の依頼を受けてマスクの縫製を始めたそうですが、ガラス戸を1枚だけ開けて、隣のスーパーに来る買い物客にマスクを売る姿にはたくましさを感じます。

できあがったマスクできあがったマスク

ドイツの事例は外出制限の収束の仕方の難しさ、即時支援金の改善点を示しています。同時に、一人ひとりの姿勢からは少しの余裕を持って適度に頑張ることの重要性もうかがえます。

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