はじめに
フィルターといえばテスラ
高性能フィルターで外気をろ過するということで思い出すのがEV(電気自動車)専業メーカーであり、プレミアムEVという独自の価値観を作り上げたテスラのクルマです。実はテスラには「HEPAエアフィルトレーション・システム」という装備があります。そのモードの名前が“生物兵器防衛モード”。なんともアメリカのメーカーらしいというか、実に刺激的なネーミングです。
モデルXをはじめテスラ車はエアコンに“生物兵器防衛モード”を装備
今回の新型コロナウイルスでも、つねに話題になった単語の一つに病院などにある“クリーンルーム”がありました。外気をろ過したり、室内の気圧を調整してウイルスの出入りを遮断したりする、特別な部屋のことですが、テスラはその状態をキャビン内で作り出せるのです。
本来は、大気汚染で亡くなる人が交通事故で亡くなる人の2倍に達しているという点から、その環境問題への対策の一つとして2016年にテスラの開発チームから発表があったシステムですから、すでに4年が経過しています。しかし今回、世界的なパンデミック発生によってウイルス問題が大きく取り上げられると、世界からもこのシステムに対する注目度が上がってきているのです。
同社は当時から環境問題に対して高い意識を持ち、解決すべき極めて重要な問題であると捉えていました。毎年、交通事故で亡くなる人の2倍以上に当たる300万人が大気汚染によって命を落としているという事実に対する解決策としてひとつのシステムを開発したのです。
まずは車の室内への空気導入ルートに使用するHEPA (High Efficiency Particulate Air Filter) フィルトレーション・システムの開発し、フィルターの高性能化を図りました。当然、その開発の発端となったのは病院やクリーンルーム、さらには宇宙産業などで空気ろ過システムがあったと言います。このHEPAフィルターですがJIS規格でも「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕獲率を有すること」などと規定されています。
キャビン前方にある大きなヘパフィルターを通過した外気はテスラ・モデルXの車内に
少しばかり分かりづらいですが、テスラの計測によれば、モデルXの室内の汚染レベルは2分も経過しないうちに測定器の計測可能レベルを下回るほどクリーンな状態、つまり計測器で測れないほど綺麗になったということです。さらにフィルター機能と同様に実現したのはキャビンの圧力を外気圧よりやや高めすることでした。これによって、室内を完全に密閉することなく、空気侵入を防ぐことができるそうです。
もちろんエアコンの外気導入経路をフィルターによって守ることで、総合的には生物兵器による攻撃をも避けることができる、と同社は説明しています。このシステムによって、テスラオーナーは言わばクリーンルームの中でドライブを楽しめるということになります。