はじめに
世界の株式市場は、3月中旬を底として大きく回復しています。日経平均株価で見てみると、一時1万7,000円を割り込む水準まで下落していましたが、4月末には2万円を回復し、その後も堅調に推移しています。これまでの戻りで、新型コロナウイルスによる株価下落の約半分を回復しました。
一方でこの期間に企業業績は大きく悪化しています。同じく日経平均ベースで見た一株利益は、1月中旬に1,650円程度だったものが、5月13日時点で853円と52%ほど下落しています。現状の日経平均株価は、1月中旬と比較して17%程度の下落にとどまっており、企業業績と比較した株価はかなり割高と言えます。
在宅勤務で個人投資家が活発化
新型コロナウイルスにより実体経済が悪化する中で、株式市場が割高と判断される水準まで買い戻された理由としては、この期間に行われた大規模な金融緩和策が挙げられます。アメリカのFRBやヨーロッパのECB、日本銀行などが相次いで金融緩和策を打ち出し、そのマネーが株式市場に大きく流れ込みました。これが株価を上昇させる大きな要因になっています。
このように強気が続く株式市場の中で、さらに好調な市場があります。東証マザーズ市場です。
東証マザーズ指数は、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の1月中旬には880ポイントあたりで推移していました。その後、新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念から、マザーズ市場も大きく値を崩し、個人投資家による追証回避の売りも相まって一時は550ポイント、率にして38%も下落しました。しかしながら、その後は急激に値を戻し、5月13日時点では837ポイント、率にして5%の下落に留まっています。
なぜ、マザーズ市場がここまで堅調なのでしょうか。一つには、前述した日米欧の中央銀行による大規模な金融緩和策がありますが、もう一つの理由として個人投資家の存在感が増していることが挙げられます。
下のグラフは、東京証券取引所における個人投資家の売買代金シェアを示したものです。一時期は12%程度に低下していたものが、足元では20%程度まで増加してきています。個人投資家の売買が活発になっている理由としては
(1)株価の下落により、新たに株式投資を始める方が増えた
(2)外出自粛により、日中に株式投資を行う方が増えた
(3)在宅勤務の増加により、仕事のスキマ時間に株式投資を行うようになった
といったことがあります。個人投資家は、値動きの乏しい大型株よりも、日中の値動きが激しい中小型株や新興市場の銘柄を好む傾向があり、このような個人投資家のマネーが流れ込んだマザーズ市場が、より好調な値動きとなっているのです。
実際にマザーズ市場では、ワクチン開発などを公表しているアンジェスなどが大商いとなっており、マザーズ市場の売買代金自体も大幅に増加しています。