はじめに

幸福だった家庭が、音を立てて崩れようとしている。まさにそのど真ん中にいる女性が、これまでのこと、夫への思いなどを語ってくれました。お金に困って、余裕がないときにでてしまったひと言は、関係性を大きく変えてします。


専業主婦になってほしいと言われて

夫に人格否定され、過去をもちだして傷つけられ、もう我慢の限界かもしれないと感じているのは、サユリさん(42歳)です。

彼女は母ひとり子ひとりで育ちました。高校卒業後に就職、その後、会社の応援もあって大学の二部に通い、卒業します。大卒資格を得て給料もアップ、さらにがんばって仕事をしていこうとしたとき、同居していた母が倒れてしまいます。彼女が28歳のときでした。

「当時、母は63歳。貯金もあまりなかったのですが、入院が長引いて、その後はリハビリ病院にかかるなどとにかくお金がかかった。医療保険にも入ってなかったんですよね。ひとりでがんばって私を育ててくれたから、私もなんとか母のために稼ぎたくて、週に数回、夜、水商売で働くようになったんです。それが会社にバレてクビになり、その後はひたすら夜の仕事で稼ぎました」

とはいえ、本来、接客業には向いていないサユリさん、並々ならぬ努力をしたといいます。お客さんの特徴や好きな飲み物、興味のあることがらなどを全部記憶、どうしたらたくさん指名がとれるかを考え続けました。

助けてくれた人

「5年ほどで母が他界しました。なかなかお店にも復活できないほど落ち込みましたね。そんなとき救ってくれたのが、今の夫です」

やっと店に出たとき、のちに夫となった彼が彼女を指名してくれたのです。以前にも接したことがありますが、それほど印象に残っているお客さんではありませんでした。

「でもそのときは本当にやさしくて。私が母を亡くしたことを聞いていたんでしょう、高いボトルを入れてくれ、『よくやったよ、エライよ』と褒めてくれました」

そこから個人的なつきあいが始まり、すぐにプロポーズされたそうです。彼は10歳年上で、自分で起業をしたやり手のビジネスマンでした。

「彼はずっと仕事一筋で結婚するつもりはなかったけど、私とならいい家庭を作れると言ってくれて。34歳で結婚、彼の求めに応じて専業主婦になりました。昼間の仕事をしたいとも思ったのですが、当時、羽振りのよかった彼は家にいてほしいって」

結婚して1年後には元気な赤ちゃんが誕生、彼女は生まれて初めて、「お金の心配をしないですむ生活」を送れるようになりました。

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