はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
私は40代女性です。20代のときに加入した更新型の生命保険に毎月8,000円ほどを支払っていますが、正直割高だと思っています。加入時は、親のことを考えて入院保障より死亡保障を重視した内容にしましたが、今後は自身の入院保障を重視したかたちに保険を見直したいと考えています。まず聞きたいのは、医療保険と生命保険は分けたほうがよいか、ということです。そして、更新型と終身型どちらを選ぶかも迷っています。
最近はネットで保険の契約ができるようになっていますが、対面契約と比較すると、どのような違いや特徴があるのでしょうか。また、ほかに気になるのが保険の見直しを行うタイミングです。数年ごとなのか、ライフイベントが発生するときなのか、見直ししたほうがよい時期についても教えてほしいです。よろしくお願いします。
【私の現在の家計状況】
収入:給与が手取りで400万円
資産:貯金が800万円程度
離婚して独身、子供なし。しばらくは働いて、ゆくゆくは親と同居する予定です。
(40代 独身 女性)
野瀬: 過去にいただいた質問でも触れましたが、保険についてよくわからなくなった、どう選べばいいのかわからないとなった場合には、「そもそも保険ってなに?」という素朴な疑問に立ち戻るとよいでしょう。
保険が持つ役割とは?
保険とは本来「滅多に起こらないけれど、起こってしまったら自分だけでは対処できない事象に対し、みんなでお金を出しあって助け合う」という性質のものです。
しかし、社会人になると、会社に出入りする保険の営業マンから声をかけられたり、学生時代の先輩で現在は保険会社勤務という人から急に連絡が来たりして、「社会人になったのだから、保険ぐらい入らないと」という営業文句につられ、なんとなく契約してしまう人がほとんどです。
そして数十年の間、毎月なんとなくお金を払っていくという光景をよく見ます。
これは実はオカシイのです。
本来みなさんのリスクは、職業、将来の夢、性別、実家の財産、兄弟構成、既婚未婚、子供の有無、預金残高、持ち家の有無などによって人それぞれのはず。
それなのに、皆一律に似た保険に入ることをすすめるような今の状態は、少し例えは悪いですが、今後一生、英語を使う必要がない人にまで「英語ができないとヤバいよ!」と不安を過度に煽って入会を強要する英会話スクールのようなものです。
また逆に考えると、本当に保険が必要な人がとりあえずすすめられた保険に入り、本当に自分に合った保険を選べていない、という危険性も持っています。
不安を持つことは悪いことではないですが、不安は不安として客観的に分析して必要な部分にだけ適切に対処するようにしたいですよね。
現状から考えられるリスク
さて、では質問者の方の「リスク」について少し考えてみましょう。いただいている情報から推察されるリスクは以下の3点です。
(1)老後資金の枯渇
(2)病気・ケガの治療費
(3)ご両親の介護による負担
お子さんはいらっしゃらないので学費や養育費の心配はないと思いますし、ご自身もしっかり収入があります。
将来はご両親と同居とおうかがいしておりますので、おそらく、古いとはいえ相続する不動産もあるのだと思います。
ですから、質問者に起こりうる大きなリスクは上記の3つ。ただし、(3)のリスクに関しては「滅多に起こらない」のではなく、「けっこうな確率で起こる」ことですので、滅多にないことが起こった場合の救済手段という保険の対象ではなく、これを完全にカバーできるという保険はありません(あることはあるのですが給付は少額です)。
とはいえ、日本の財政が破綻する前に老後を迎えるご両親の世代であれば、国や自治体がほとんどの医療費を負担してくれるので、ほとんどのケースであまり問題にはならないかと思います。
ご両親にはしっかり体を鍛えて健康を維持していだきましょう。それが一番の保険です。
生命保険と医療保険の考え方
これらのリスクを考えた場合に質問者の方にとって必要なのは入院保障がある医療保険です。
年齢から推察するに、ご両親は年金をしっかりもらえる世代ですから、不幸にも質問者の方が事故や病気で亡くなられたとしても、ご両親の生活を支えるという面で追加的なリスクがある、ということは考えにくいからです。
また、生命保険と医療保険を同じ保険会社ですべきかどうか、という問題もありますが、私の個人的な意見ですが同じ保険会社でよいと思います。
当然、会社によって扱っている保険商品に違いはありますが、基本的な商品であればどこの会社でもそれほど変わりはありませんし、なにより住所や契約を変更するときに窓口がひとつで楽なほうがよいと思います。
更新型? 終身型?
更新型というのは定期の意味かと思いますが、質問者の方の場合、更新型でよいかと思います。
終身型であれば、確かに「いつか」保険金を貰えますが、そのときには質問者の方も、貰って助かる人も存在しないからです。
誰かに保険金を残したいというのであれば話は別ですが、そうでない場合は更新型にして少しでも毎月の負担を減らしたほうがよいでしょう。
対面とネット契約はどう違う?
個人的にはネット契約をおすすめします。一時期ほど価格差はないとはいえ、それでもネットの保険会社のほうがコスパがよいからです。
もうひとつ、ネット生保のよい点は担当者に対する「情」が生じにくいため、解約や契約変更を行いやすいところです。
私も過去には、さまざまな保険に加入していましたが、解約しようとすると担当者の方が「私と野瀬さんの仲なのに」「ご家族のことが心配ではないんですか?」と情に訴えてくることが多く、断るのになかなか難儀したものです。
保険は「愛」ではなく「金融商品」ですので、ドライに判断できるネットのほうがよいでしょう。
一部の難解な商品については、担当者の方にしっかりと対面で説明していただいたほうがよいと思いますが、そんなに難解な商品は個人であれば基本的には必要ありません。その意味でもネットでよいと思います。
保険の見直しタイミング
基本的に保険の見直しは、質問者の方自身や守りたい人の環境や立場に変化があった場合に行います。
質問者の方の場合、想定されるのは、転職、退職、健康状態など自身の変化かと思いますので、それらの動きがなければゆっくりとかまえていればよいでしょう。
現実的な問題として、健康状態が歳とともに改善するとは考えにくいですし、先述の(1)(2)のリスクが大きく変化することはありません。
以上、ご参考になりましたら幸いです。