はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの企業がテレワーク(在宅勤務)を取り入れています。自宅で仕事をするようになって、改めて「住まい」について考えた人も多いのではないでしょうか。

「職場まで歩いていけるマンションに住みたい」「子どもとの散歩に適した緑の多い環境に住みたい」など、住まいに求める価値観は人それぞれ。新築にこだわらず、中古物件を視野に入れ始めたという人もいるでしょう。

そこで、中古マンションを見極めるコツを、LIFULL HOME'S総研所長の島原万丈さんに4回にわたって伺います。

第4回は「共用部の修繕や管理の費用をどう考えるか」です。


修繕積立金は「数年後」、管理組合費は「今」使うためのお金

マンション購入後、住宅ローンに加えて毎月支払わなければならないのが、修繕積立金と管理費。両者の違いについて、最初に簡単に説明しておきましょう。

【修繕積立金】
共用部分の「工事」にかかわる費用で、10年後や20年後に使われることを踏まえて長期的に積み立てていくものです。主な使用例は以下の通りです。
・マンションの外壁や屋根の塗り替え
・エレベーターの修理費
・給排水管の取り替え
・機械式駐車場の修理費
・災害によってダメージが出た場合の補修工事

【管理費】
修繕積立金と同じように共用部に使うための費用ですが、「日常の管理」にあてるのが目的です。主な使用例は以下の通りです。
・契約する管理会社や清掃会社への委託費用
・エントランスなどの植栽の維持費
・共用部の消耗品費(電球の買い替えなど)
・管理組合の運営費(事務費など)

このように、毎月同じように支払っていても、目的は大きく異なっています。中古物件の場合、特に気になるのが修繕積立金。第2回でも触れましたが、耐震補強をする場合などはかなりの金額が必要となります。そこまで大掛かりな工事はしなくても、足場を組んでの外壁補修は定期的に行われるもの。「具体的な金額は工事の内容やマンションの規模によって変わるが、外壁は12〜13年に1回のペースでの修繕が一般的」と島原さんは話します。

修繕積立金は安いほうがお得?

ところで、この修繕積立金は物件ごとに金額が異なります。例えば、品川区のとある駅から徒歩5分の場所に建つ、ほぼ同じ占有面積の2つのマンション。一方は6,000万円の新築タワーマンションで、修繕積立金は月額およそ5,000円。もう一方は築26年の7階建マンションで、価格は5,000万円を切るものの、修繕積立金は約1万5000円です。物件価格が多少高くても、修繕積立金が安い物件のほうがお得なのでしょうか?

「修繕積立金は安ければいいというものではありません。いざというときにお金が貯まっていないと必要な修繕ができない恐れがあります」(島原さん)

さらに、島原さんは「新築時に少しでも値段を安く見せるため、売る側が修繕積立金を低く設定する傾向がある」とも指摘します。その際たる例がタワーマンション。建物が超巨大で高層のため、外壁の修繕も一般的なマンションと比べてお金がかかります。エレベーターも特注品です。

「タワーマンションの歴史がまだ浅いため、将来的にどんな工事が必要になるのか、まだあまり検証されていません。本来であればかなりの金額を積み立てておかなければならないのに、売り出し時の修繕積立金が低すぎると問題視されています」(島原さん)

島原さん曰く、「築年数が経つにつれて修繕積立金が上がるのはお約束のようなもの」。人間と同じで、建物もメンテナンスが必要。今はまだ新しい新築も、いつか修繕しなければならない箇所が出てきます。現時点での修繕積立金の支払額よりも、修繕時に使える額が適切に集められているかどうかが重要なのです。

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