はじめに

財産分与の手順と相続税の注意点

次に、財産の分け方の問題です。財産の分け方を考える際に、ご自身の相続人は誰なのかの確認が大事です。相続人の確定、財産状況の把握、後継者の選定ができてはじめて財産をどのように分けていくのかという土俵に乗るのです。

財産をどのように分けるか決まったら、引き継ぐ予定の財産額に応じて、生前に引き継ぐなら贈与税、相続時に引き継ぐなら相続税に対する納税資金も考えなくてはなりません。特に会社株式を引き継ぐ後継者は、納税資金が足りなくなることが多く、対応策を検討する必要があります。

事業承継で最も大切なことは、後継者が安心して経営できる体制を作ること。経営に関する決定権をもたせることです。

そのために会社株式をすべて後継者へ渡すというお考えなのであれば、将来の遺産分割でもめる可能性はないのか、遺言書を作成する場合にはほかの相続人の遺留分に問題はないかなどを考慮し確認しておく必要があります。

経営者はいつから準備をはじめればよい?

今回の裕二郎さんの件に関しては、現状把握は完全なものではなく必要最低限の会社株式を後継者に渡すという遺言書のみ。納税資金に対する対応策もできず、相続人になりうる3姉妹の遺留分にまで配慮することはできませんでした。

会社の相続・事業承継は、スムーズに進められるか否かで会社の存続に大きな影響が出てきます。事業承継の検討から実行までの期間は3~5年ほどかけて行うことが多いので、早めに検討を始めてください。後継者がまだ決まっていないところはなおさらです。

まずは、現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。

<税理士:藤原由親>

この記事の感想を教えてください。