はじめに
日本での成功の可能性は?
Mobikeは16年4月にサービスインしたシェアサイクルの代表格ですが、さらに先行していた競合大手のofo(2014年、大学のキャンパス内の移動用サービスとして創業)とあわせた2社の成功に牽引されるかたちで非常に多くの事業者が参入。実際に人々の生活を大きく変えたことで、16年は「中国シェアサイクルの年」と言われました。
Mobikeはオレンジ、ofoは黄色など各事業者ごとに塗り分けられた自転車は大都市では見慣れた存在になっています。
しかし便利さの反面、乗り捨てられた自転車が交通の邪魔になる、壊れていても適切にメンテナンスされていない、使用上のマナーが悪くて事故が多い……など、多くの問題が指摘されています。中国国内でも日々論争が起こり、事業者側も行政もまだまだ試行錯誤を繰り返している段階といえるでしょう。
海外進出が始まった当初、同じく自転車文化が根付いている日本の名が真っ先に候補として挙がりながらも実現しなかった理由も、ここにあります。
日本の法律上「放置自転車」が明確に定義されておらず、法的リスクがあること。放置自転車が大きな社会問題になった過去の経験から、多くのクレームが予想され、社会から積極的に受け入れられないだろうということ。
その対策として、自治体やコンビニ、レストランと提携してあらかじめ駐輪できる場所を決めると報道されましたが、もしこの通りだとすると、いくら提供場所が増えたとしても結局は従来の拠点型サービスの延長にしかすぎません。
日本参入はしたものの、同じく法律上の制約や規制に縛られ、現在は非常に限られた範囲でしかサービスの提供ができていないUberの二の舞となってしまうのでしょうか。
また、サービス内容も本来と異なるため、Mobikeが中国国内で培ってきたGPS付自転車のノウハウを活かすことも難しそうです。
規制市場に挑む、Mobikeの本気度は?
シェアサイクルのビジネスモデルは、とにかく身近にいつでも自転車があるという利便性が競争力に直結するため、人口密度が低い地域では成り立ちません。
すでに中国のめぼしい大都市には進出を果たしてしまった大手事業者は、無料キャンペーンの乱発など「烧钱大战(金を焼くような速度で使う消耗戦)」の段階に入っており、次の収益源として海外に活路を求めています。
Mobikeは16日、6億ドル(約670億円)にも及ぶラウンドE投資の実施を発表。その巨額の資金の行方が注目されていました。
その後すぐに報道された日本進出は、さらなる投資を募るための単なるポーズにしか過ぎないのか。それとも本腰を入れて日本向けにビジネスを始めるのか。
シェアサイクルは私個人にとっても中国での生活を大変便利にしてくれたサービスであり、後者であることを切に願いますが、まずはこれからの成り行きを見守りたいと思います。