はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
銀行破綻時の預金保険額が1,000万円までということでいくつかの銀行口座を持っています。また定期預金の金利キャンペーンや利便性などに惹かれて作成したネット銀行や銀行のインターネット支店の口座も複数あります。そこで口座管理方法についてお聞きしたいです。
ネット専業銀行や銀行のインターネット支店などの多くは通帳を発行しておらず、一部はカードすらありません。そのため、万が一、私に不慮の事態があった際に、家族がこうした口座にある資産をきちんと「発見」できるのかと、ふと心配になりました。届けを出せば、日本の銀行にある口座を一括して見つけてもらえるような社会制度などはあるのでしょうか?
ない場合は、やはり銀行ごとのID・パスワード・各種アクセスキーなどを紙にしたためて保存しておくなどの自己防衛手段をとったほうがよいのでしょうか? ただ、これはセキュリティ的にイマイチ不安です。
(30代後半 独身 男性)
野瀬: 私も質問者の方と同じように、たくさんの銀行口座を持っています。仕事に使う口座、生活費のための口座、積立貯金をしている口座、不動産投資を行っている口座など目的によって使い分けているからです。またインターネット証券の口座も複数持っているのでこちらの管理も大変です。
定期的に書面で連絡が届くとよいのですが、最近のインターネット銀行・証券は取引履歴や残高証明もメールで送付するところがほとんどですので、本人以外の方が口座について認識することが難しくなっています。
実はインターネット銀行・証券が増えてから、この手のご相談は多く、相続されるほうも悩みのタネとなっています。
ちまたでよく言われている対策
・故人のメールをチェックしましょう
・故人の郵便物や確定申告書類をチェックしましょう
・近所の銀行に手当たり次第問い合わせましょう
ちまたでよく言われている対策としてはこのようなものがありますが、結局は……という方法しかありません。
そして死亡届を出すと、銀行や証券会社などに連絡が行くような社会システムも存在しません。
質問者の方のご提案のように、銀行ごとにID・パスワードをメモして残しておくというのもセキュリティ上、問題がありすぎます。
では、どうすればよいのかという話ですが、ここからは私自身が実践している方法をご紹介します。
私はよく引っ越しをするのですが、いつも面倒なのが銀行や役所への連絡です。銀行・証券・保険・役所・水道・電気・ガス・ネット・電話・カード会社・所有不動産の管理会社など、少し考えただけでも山のように連絡が必要なところがあります。
いちいち考えるのも面倒なので、私はエクセルでこれらのリストを作成し、引っ越す際のチェックリストとして活用しています。
銀行や証券会社の名前、支店名、連絡先となる電話番号を記入してリスト化しておき、順次連絡して住所変更手続きを取るのです。
そして定期的に、このリストを家内と共有するようにしています。共有といっても大したことではなく、メールで送っておく程度でよいでしょう。リストが必要になった時はメールを検索すればいい話です。
IDやパスワードはもちろん記載していません。家内に見られては困るものもあるからです(笑)。
IDパスワードは残さなくても問題ない
それでは、私にもしものことがあった時に残高が見られないじゃないかと思うかもしれませんが、基本的に相続人であれば残高の開示を求めることはできます。ですから、IDやパスワードを残さなくても問題ありません。
ほかの相続人がいるのに、特定の人だけが故人の口座にログインできることのほうが問題あると思います。ログインは履歴が残りますので、他の相続人とトラブルになる可能性もあります。
もしリストを作るのが面倒なのであれば、家計簿アプリで口座を管理して、その一覧画面をプリントアウトしておくだけでもよいでしょう。リストを作るよりは手間が省けるはずです。
高齢の方であれば相続を意識して、このようなリストを作られていることも多いのですが、40代50代の方はまだまだ先のことだからと、手を付けていない方が多いです。せめてご家族にはリストを共有しておいたほうがよいと思います。
遺産リストとして使えるだけでなく、死後不要になった自動引き落としの支払いをなるべく早く止めるなどの処置にも役立ちます。
これだけインターネット銀行・証券が主流になってきているので、今後おそらくこの問題に対処するような制度ができると思いますが、ご自身が引越しする時の便利帳としても役立ちますので、ぜひリスト作成を試してみてください。