はじめに
欧米やアジアでの新型コロナウイルス感染拡大の一服と、一部で進む経済活動再開の動きを受けて、世界の株式市場では比較的堅調な相場展開が続いています。日経平均株価は2万2,000円台に乗せ、NYダウは2万5,000ドル台まで上昇するなど、市場心理には顕著な改善が認められます。
5月は例年、「セル・イン・メイ(5月の売りという季節性)」が警戒されますが、今年は大きな波乱もなく、無難に乗り切りました。
「楽観」と「慎重」のバランスが必要
ただ、現在の相場環境が決して盤石なものではない点には注意が必要です。足元の実体経済が、行動制限や活動自粛の影響から、大幅に悪化していることは紛れもない事実です。それでも株価が堅調なのは、先々の景気回復期待を前倒しで織り込んでいるからに過ぎないと考えられます。
性急な経済活動の再開によって、感染の第2波がやってきた場合、相場がまた振り出しに戻る可能性は否定できません。現時点では第2波の発生によって、相場が二番底を試しに行く展開は想定しておらず、あくまでも年終盤での尻上がりの株価上昇がメインシナリオとしていますが、警戒は必要でしょう。
当面は各国が適切な感染対策のもと、さまざまな景気刺激策や金融緩和策を駆使して、経済を正常化させられるかどうか、注意深く見守っていきたいところです。
また、少し前まではさほど大きなリスク要因としてみなしてはこなかった、米中対立の再激化についても要注意です。6月は「楽観」と「慎重」のバランスを巧みに取ることが市場参加者には求められそうです。
原油相場の持ち直しは株式市場にもプラス
WTIの原油先物は4月の限月交代時に直近限月の価格がマイナスに陥りました。それが引き金となって、株式市場にも大きな動揺が走ったことは記憶に新しいところです。エネルギーを消費する立場からすれば、原油価格は安いに越したことはありませんが、株式市場にとってはネガティブに働く面も小さくないとみられます。
エネルギー企業の破綻懸念に加え、金融商品として原油に投資する主体の損失拡大、産油国が運用するオイルマネーの株式市場からの引き揚げ、日本にとっては円高進行などが株式相場に悪影響をもたらすとみなされているためです。
ただ、足元のWTI原油先物価格は30ドル台の半ばまで水準を回復しています。4月にWTIのような混乱が見られなかったブレントやドバイの原油価格も30ドル台にあり、現時点での原油の適正価格はおおむねそのあたりと判断できます。
株式市場で株価が堅調に推移していることに見られるように、原油市場の参加者も年後半に向けての緩やかな景気回復期待を織り込みつつあります。いずれ原油需給のミスマッチが解消に向かうと考えれば、30ドル台は十分に正当化されるということなのでしょう。
とはいえ、当面、原油需給のミスマッチが続くことを前提にすれば、原油相場の上値は重いと見られますが、少なくとも大幅な値崩れを起こさない限りは、株式市場にはポジティブと受け止められそうです。