はじめに

返済義務のない「給付型奨学金」が埋もれてしまう理由

そもそも、奨学金には大きく分けて「給付型奨学金」と「貸与型奨学金」の2つの種類があります。

給付型には、返済義務はありません。国や地方自治体・大学・民間財団・民間企業が提供し、多くが給付基準を設けています。

一方、貸与型奨学金には返済義務があり、無利息の「第1種奨学金」と、利息のつく「第2種奨学金」の2つが存在します。どちらにも所得制限があり、第1種は一定以上の成績が求められているため、第2種に比べて審査基準が厳しくなっています。

学生の将来にとって有利なのは返済義務のない給付型ですが、「全国におよそ1万2000件も存在しているものの、大学の掲示板や地方自治体・財団のホームページなどで募集されることが多いため、学生側がその情報を見つけづらいのが現状です」とコウさん。

加えて、給付型は種類が多い上に、奨学金ひとつに対しての募集人数が少ないため、自分で探して申し込むまでの手間を考えると、実際に着手する人は多くないといいます。

とはいえ、返済義務のない給付型を受けられたかもしれないのに、その情報を知らずに貸与型を借りて借金を背負うのは学生にとって大きな損失になります。そのため、同サービスでは見つかりにくい給付型を中心に紹介。

「林レオロジー奨学金いいよねとか、孫正義育英財団は倍率が高いらしいという会話などから、自分たちがおすすめできる奨学金を抽出しています」。受給者目線で奨学金を徹底的に調べつくしたコウさんと奨学金を受給中の学生インターンが、“奨学金ソムリエ”として選んでいるといいます。

奨学金のオールラウンダーに

同サービスを利用するためには、学生はまず名前や生年月日などの基本情報に加えて、大学・学部・学科や専攻を登録する必要があります。また、留学・スポーツ・音楽芸術・研究・起業・社会貢献活動など、チャレンジしたい項目を入力することで、その分野に特化した奨学金も抽出される仕組になっています。登録や検索は無料。広告収入によるビジネスモデルを考えているといいます。

リリース3日目で1500人程が登録。現在も同サービスを利用することはできますが、「次回の奨学金シーズン、2021年1月の正式リリースに向けて精度を上げていきたい」とコウさんは意気込みます。

同社は、このサービスの他に、貸与型奨学金を背負った学生・社会人と奨学金返済を援助してくれる企業を繋ぐマッチングサービス「Crono Job」も運営。現在の掲載求人数は約3500件。すでに奨学金を背負っている人に向けても、その負担を軽減するサービスを提供しています。

奨学金を利用せざるを得ない状況において、情報格差をなくし、経済的な理由で学びをあきらめないようにするためには何ができるか――。開発者自身の経験に基づく奨学金サービスのこれからの展開に期待が募ります。

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