はじめに

世の中には、様々な詐欺が起きていますが、表に出てくるのはごくわずかです。その中で、民事裁判を起こして被害金が取り戻せたり、警察に被害届を出して詐欺容疑で逮捕される事例はさらに少ないでしょう。4年ほど前、石川県に住む50代男性から5,000万円の詐欺被害に遭ったという連絡を受けました。そのお話です。


ビジネス絡みの詐欺立件は困難

話を受けた時点で男性はすでに弁護士に依頼して被害金を取り戻すための民事訴訟を起こし、係争中でした。

しかし警察へ証拠を提出しているものの、なかなか犯人逮捕までは至らない、とのことでした。確かに、詐欺罪を成立させるためには、初めから騙すという意図をもって嘘の話をもちかけた等の要件が必要で、相手側から「最初から騙すつもりはありませんでした」と言われてしまえば、その辺りの証明がかなり難しくなります。特にビジネス関連の投資となると、詐欺を立件するまでのハードルが高く、被害に遭いながらも泣き寝入りするケースも少なくありません。

被害に遭った詐欺事件とは

男性は、自動車会社を経営する60代男性と家族ぐるみの付き合いをしていました。2014年3月に、当時30代の息子(以下O氏)から「仲間うちで中国やドバイに輸出事業を展開している」と、中古車の輸出販売への投資を持ち掛けられました。

「利益は出せるので、ぜひやってみませんか? 普通車輸出の利益は、投資金の2割くらい、軽四であれば一台につき利益は15万円くらいになります。ただグループでしているので手数料はかかりますが」

さらに具体的な話もします。

「グループ全体で100台の輸出とすると、自分の持ち分は20台になります。ぜひとも、そのうち10台分の代金をあなたに受け持ってもらいたいのです」

男性がグループの長について尋ねるとO氏は「豊橋に住んでいる中嶋さんという方で、自分が昔から大変、世話になっている信頼のおける人です」と、名古屋の栄に賃貸ビルや不動産を持っている大金持ちだといいます。

「中嶋さんからも、この事業は売れている車の売買にのっかるだけなので ハズレがないと言われています」

男性がどうしようかと思っていると、次の言葉でダメを押します。

「早くこの事業を軌道にのせて、将来的に父の自動会社の手助けもしたいんです」

この熱い気持ちに応えるために、男性は資金を出すことにしました。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介