はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
オリンピックに向けて日本経済が盛り上がるというので、「よし、株を買おう!」と周りの人に話したら、「もう遅いでしょ?」と言われました。本や雑誌などでは「オリンピックで上がる株」のような特集もまだまだ見かけ、読むとその銘柄を買いたくなってしまいます。株の買い時はどのように判断すればよいのでしょうか? 本や雑誌で特集された銘柄を買うのは遅いですか?
(20代後半 独身 女性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
投資で儲ける方法は2つしかありません。
投資で儲けるための2つの方法
ひとつは人を出し抜いて儲ける方法です。自分しか知らない情報やいち早く知ることができる情報があれば、それを使ってほかの人から富を合法的に奪うことができます(なお、インサイダー取引は犯罪です)。
もうひとつの方法は市場全体の価値の上昇から利益を得る方法です。インデックス運用は、このように市場全体が経済成長によって価値を増していくなかで自分の資産も増やしていこうという考え方です。
「株の買い時を考えよう」というのは、前者によってリターンを上げる戦略です。この場合、人の半歩先を行く情報収集が大切になりますが、はたしてそのようなことが簡単にできるのでしょうか? かなりハードルが高いと思います。
例えば、本や雑誌から仕入れた情報は、すでに市場に織り込まれていることが多く、このような公にある情報(パブリックインフォメーション)から人を出し抜くことは簡単ではありません。
自分だけが知っているような特別な情報がないとすると、存在している情報から、ほかの人が気づかないような未来を自分なりの方法で予測するしかありませんが、これも簡単ではありません。人が考えることと同じではなく、その少し先を考える必要があるからです。
例えば、東京オリンピックで景気がよくなるという単純な思考ではなく、オリンピックが終了したら、その次に何が起こるかといった、まだ市場の多くの人が考えていないことを予想して、そこから起こる変化を投資のアイデアにする。
そして、このようなアイデアの多くは、誰もが考えなかった突拍子もないことです。
価値あるアイデアとは?
今は周りの人からは相手にされないような斬新なアイデアでなければ価値がないのです。逆説的ですが、みんながよいと思うようなアイデアに価値はありません。
このように考えていくと、投資するタイミングによって利益を上げようとすることは、極めて限られた人にしかできない投資法であることがわかると思います。多くの人が気がついていない、でも自分だけには見える未来がもしあるのであれば、投資タイミングを考えて投資してみるのとよいでしょう。
しかしそんな投資アイデアを持ち合わせていないのであれば、無理に投資タイミングを考えることは成果に対して逆効果です。高値掴みになって結局タイミングを考えない方がよかったということになるのがオチだからです。
少なくとも日経新聞やNHKニュースで報道されたことは、すでに多くの人が知っています。つまり投資判断の材料にするための情報としての価値はないと考えるべきです。