はじめに

過去最多の不正送金の被害数

警察庁によると、令和元年のインターネットバンキングに係る不正送金の被害件数は1872件と過去最多で、被害額は25億2100万円と、前年度の4億6100万円から大幅に増えています。今、続々と私たちの口座からお金が消えているのです。

知らぬ間に、銀行残高がゼロにならないためにも、知っておいてほしいのは、詐欺師たちが使う、引き算の法則です。詐欺師は「引く」という心理操作術を使いながら、私たちを罠にはめようとしてきます。

人は財布をなくした、怪我にあったなど、平穏無事な世界からマイナスな状況に陥ると、冷静ではいられなくなります。騙す側はあえて、現状からの引き算をして、こうした状況をつくり出します。

最近のオレオレ詐欺を見ても、偽の息子が「コロナにかかったかもしれないから病院にいく」「コロナ不況の影響で、会社が倒産して、お金が必要になった」など、電話を受けた親を不安にさせるようなマイナスな事情を訴えかけて、騙そうとします。
 
詐欺メールも同様で、アメリカの大手IT企業をかたるものには、

「普段お客様がご利用になられていない環境から〇〇(編集注:企業名が入ります)へログインがありました,異常は発生しますので、お客様のアカウントをチェックしてください。
XXXX ID:*********
ログイン日時 : 2020/6/18 23:15:28 
IPアドレス : 152.209.125.32(奈良)
不正なユーザーが〇〇アカウント(編集注:企業名が入ります)にアクセスした可能性があると考えています。したがって、アカウントへのアクセスを一時的にブロックし、オファーを無効にします」

というものがあります。

IPアドレスや不正なログイン情報までも提示して、メールを見た人に不安感を生じさせています。

こうした「セキュリティ上の問題が見つかりました」「ログイン異常がありました」という言葉で、安心から不安への引き算をしてくるわけです。

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