はじめに
ただでさえ変化が激しく先が見えづらい世の中なのに、新型コロナウィルスの感染拡大によって、ますます不安やストレスを感じることが増えました。
不安は心をざわつかせ、ときにはネガティブな感情の連鎖に陥ります。そして、あまりにもネガティブな自分に嫌気がさして、「不安な気持ちを抑える方法があればいいのに」と考えてしまいます。
ところが、心理カウンセラーでベストセラーの著書を持つ石原加受子さんによると、不安や怒りのようなネガティブな感情は、抑えたり、コントロールしたりすべきものではないそうです。石原さんはネガティブな感情を「自分を守るための貴重な情報」ととらえて、次のように述べています。
感情によって、自分に何が起こっているのかがわかります。とくにネガティブな感情であれば、それによって、自分のどこに問題があるのかを探り当てることができます。
感情は自分の問題点を見つけ出すツールなのですから、「感情を抑えたり、コントロールする」というのははっきり言うと間違っているのです。
(『感情はコントロールしなくていい』p15より)
では、たとえば「不安」という感情とはどう付き合えばいいのでしょうか。石原さんの著書『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』の第5章からピックアップしてみましょう。
不安はネガティブな未来予測
人は誰でも過去に失敗した経験を持っています。失敗したときと同じような場面に出くわすと「また失敗したらどうしよう」「今度失敗したら二度とチャンスはないかもしれない」と不安をおぼえます。苦手意識を持つことでますます失敗しそうな気がしてきて、ネガティブな思考と感情の連鎖にはまってしまいます。
多くの人たちは、このような「ネガティブな出来事が起こる未来」を予測しがちです。
しかし本来は、「失敗する可能性もあるし成功する可能性もある」というのが公平な見方です。うまくいくことだってあるはずなのに、不安の連鎖に陥ってしまうと、成功する可能性を想像できなくなるのです。
仮に失敗したとしても、ポジティブな側面もあるはずです。
どんな場合であっても、「100%失敗だった」ということはまずありません。
どんな結果になったとしても、その中に、必ずうまくいったことがあるし、以前より成長したところがあります。
ネガティブな意識が強いと、単にそれが見えないだけと言えるでしょう。
(p140より)
不安の理由を洗い出す
石原さんはまた、「私たちのその時々の選択と行動は、気づいていなくても、実際には、ポジティブな意識とネガティブな意識の分量やその質に応じて左右されている」と言います。誰にでもポジティブな面とネガティブな面があり、「不安」を強く感じるときは、意識やものの見方が、ネガティブな方向に偏っている状態だと言えそうです。この状態を放置すると、漠然とした不安を感じ続けることになってしまいます。
どうすればこの不安の連鎖から抜け出せるのでしょうか。
もしあなたが、絶えず不安に駆られているとしたら、それは、その時々に感じている自分の気分や感情を無視しているからだと言えるでしょう。
不安は決して、唐突に無秩序に起こっているわけではありません。
ある不安が起こるとしたら、その一つひとつにおいて、不安になる理由があります。
(p146)
ネガティブな気分や感情を感じたときには、それをやり過ごさないで、その都度、その感情の出所を洗い出し、そして、具体的に解決していく必要があります。
(p157)
単に「次のプレゼンに失敗したらどうしよう」「またきっと失敗する」という不安は漠然とした感情です。対して、「前回のプレゼンではいくつかの質問に答えられなかったから失敗した。今回もそうならないか不安だ」というように“不安の理由”がわかっていれば、「想定問答にモレがないか、先輩にチェックしてもらおう」などの具体的な解決策が見えてきて、行動に移しやすくなるはずです。
無意識にネガティブに考えてしまう傾向のある人は、日頃から次のようなレッスンをしてみるといいでしょう。
それには、まず自分が「“いま”体験している”」場面ごとでの「自分の感情に気づく」ことです。
たとえば「不安」ということでいうと、
“いま”、来週の出張の場所に間に合うだろうかと考えて不安になった。
“いま”、上司に「来週までに終わるのか」と言われて不安になった。
“いま”、協力を当てにしていた同僚から断られて、「一人でできるだろうか」と考えて不安になった。
こんな風に、具体的な状況をつかむレッスンをしていきましょう。
(p158)