はじめに
「希望出生率1.8%」これは希望通りに子供を持てたときの水準として政府が掲げる数字です。
しかし現実は理想にはほど遠く、6月2日に公表された人口動態統計によると、2016年の合計特殊出生率は1.44となり、前年から0.01ポイント低下。出生数は97万6,979人とはじめて100万人を割り込みました。
歯止めが利かない少子化問題の解決の糸口として、自民党の小泉進次郎氏らが提唱するのが「こども保険」です。
まだ構想段階ではありますが、もし実現すると、私たちの家計にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
幼児教育・保育の無償化を目指す
減らない保育園の待機児童、深刻化する保育士不足……とりわけ未就学児を取り巻く環境については改善の兆しが見えません。
年金・医療・介護には社会保険があるのに、少子化、待機児童問題など差し迫った課題である子育てにはなぜ社会保険がないのか?
3月、自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員で構成された「2020年以降の経済財政構想小委員会」は、「こども保険」構想を発表。
子育て世帯のための制度としては、すでに中学生までを対象に支給される児童手当がありますが、この児童手当にこども保険を上乗せ。子供が必要な保育・教育などを受けることができないリスクを社会全体で支え、幼児教育・保育の実質的な無償化への道筋を探ります。
その財源として構想されているのは、社会保険料の引き上げです。
まずは企業や個人の保険料率に0.1%を上乗せして徴収。3,400億円の財源を確保し、未就学児ひとりにつき月5,000円相当の支給を見込みます。
将来的に0.5%の引き上げができれば、その財源は1兆7000億円となり、月2万5,000円の支給が可能になります。
家計への負担は?
公的年金の保険料率は、13年ほど前から毎年段階的に引き上げられてきました。
今回、想定されている0.1%の上乗せは、私たちの家計に対して、どれくらいの負担となるのでしょうか。
30代会社員子供2人世帯で、年収が400万円、給与は月額24万円の場合、約15%の3万4,960円が社会保険料として天引きされています。
もし、そこにこども保険料として0.1%が追加徴収されると、金額としては240円の負担増となりますが、子供が未就学児であれば、ひとりにつき月5,000円が支給されるため、1万円を受け取ることができます。
このように子育て世帯にとっては、とても心強い制度となりそうです。
不公平感に賛否
一方で、独身・子供がいない人にとっては「負担が増えるだけ」「受け取るものがないので不公平」「独身税、子無し税だ」という意見も。
小泉進次郎氏は、そうした声に対しこのように答えます。
子供が増えれば、人口減少に歯止めがかかり、経済・財政や社会保障の持続可能性が高まる。こども保険の導入により、企業や勤労者を含め、すべての国民にとって恩恵があり、就学前の子供がいない世帯にとっても、間接的な利益がある。
(こども保険に関するFAQ)
「社会全体で子供を支えよう」という今回の提案。
6月にまとめられた政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2017」にも、幼児教育・保育の早期無償化が盛り込まれ、その財源については、こども保険を軸に検討が進む見通しです。