はじめに
6月調査の日銀短観は悪い中にも底堅さ
6月調査の日銀短観は、新型コロナウイルス感染症の影響で、厳しい内容となりました。大企業・製造業・業況判断DIは▲34と6期連続悪化、リーマン・ショック直後の2009年6月調査(▲48)以来の低水準を記録しました。
大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は2017年12月調査で4%まで低下し、そこを底に2019年3月調査から増加、2020年3月調査で19%になっていました。そして6月調査で41%まで大きく増加しました。
大企業・非製造業・業況判断DIは▲17で3月調査の+8から25ポイントも低下し、2011年6月調査(▲5)以来のマイナスに転じました。大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は、2017年9月調査から19年12月調査まで4%または5%で安定的に推移していましたが、2020年3月調査で一気に8ポイント悪化し13%になりました。6月調査では19ポイントも悪化し32%になってしまいました。
なお、大企業で唯一、3月調査より業況判断DIが改善したのは小売で、3月調査の▲7から6月調査は+2へと9ポイント改善しました。ステイホームでスーパーの売り上げが増えたことなどが影響したようです。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大で訪日外国人客が急減し、また県をまたぐ人々の往来が減少したことで大きく影響を受けた、宿泊・サービスの業況判断DIが▲91という史上最低水準になりました。
しかし、6月短観はよく見ると悪い中にも底堅さが感じられます。大企業・製造業・業況判断DIがリーマン・ショック時の最悪水準(2009年3月調査▲58)を下回りませんでした。
雇用に関して、大企業も中小企業も、製造業・雇用判断DIが「不足超」から「過剰超」に転じた点は気がかりですが、全体ではマイナス圏(「不足超」)を維持していて、先行きは「不足超」が拡大する見込みです。
また、金融機関の貸出態度判断は、中小企業ではむしろ前回調査より緩くなっています。政府・日本銀行の大規模な財政・金融政策が一定の効果を発揮していることの表れであり、最悪の事態を防いだとも言えるでしょう。
GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」は悪くありません。
現時点で2ケタ減少の中小企業を含んだ全規模・全産業で、2020年度は+0.9%の増加と2019年度の+1.6%よりは低いものの、新型コロナウイルスの影響がある中でプラスを維持しています。テレワークや5Gなど新しい環境に備えた投資が下支えしている面がありそうです。