はじめに
最近、金価格が上昇している理由
そう考えると、なぜこのところ金価格が上昇してきたのかが、何となく見えてきます。
国内金価格は2019年7月あたりから騰勢を強めていますが、ニュースを振り返ると、さまざまな事件があったことに気付くでしょう。米中貿易戦争はすでに深刻化していましたし、2019年10月にはストックホルムで行われた北朝鮮の非核化をめぐる米朝実務者協議において、北朝鮮側が「決裂」を宣言。2020年に入ってからは新型コロナウイルスのパンデミックによって世界経済が停滞し、米中対立が一段と深刻化しました。まさに「有事の金買い」です。
加えて、世界各国が経済の停滞によるリスクを最小限に抑えるため、積極的な財政出動と金融緩和を打ち出しました。財政出動や金融緩和は、簡単に言えば政府や中央銀行が世の中にお金をばら撒く行為です。世の中にお金が溢れ返れば、金利はどんどん低下します。
ご存じのように、日本だけでなく他の先進諸国でも、今や金利がマイナス圏に入っているところが少なくありません。その結果、債券を保有するメリットが後退し、その代替として金を保有する動きが強まってきました。さらに量的金融緩和によって市中に現金が大量に供給されたことにより、行き場を失った現金の一部が金市場に流れ込み、金価格を押し上げています。
資金の大量供給による金利の低下は、将来のインフレを予見しています。インフレとはモノの値段が上昇することなので、実物資産の価格上昇を促します。現時点における金価格の上昇は、将来のインフレ期待を反映したものと考えることも出来るのです。