はじめに
厳しい状況が続く観光業界
田舎と都市において程度の差はあるものの、ドイツの観光業界はコロナ禍によって全体的に厳しい状況に追い込まれています。ドイツ連邦観光経済社団法人が発表した2020年5月分の統計からもその深刻さが浮き彫りになりました。
この統計は飲食、ホテル業界の売り上げをまとめたもので、前年度の同時期に比べると全体で63.4%の売り上げ減少が明らかになりました。ホテル業界においては、80%の売り上げ減を記録しています。ロックダウンの解除や制限緩和の影響を受けて4月の収益減少幅に比べるとやや回復傾向にあるものの、苦しい状態が続いています。
飲食、ホテル業界以外の観光産業のダメージも見過ごせません。地域紙ノルトヴェスト紙には、ヴァッテン海を走る馬車の御者の訴えが取り上げられています。
ヴァッテン海の海岸(5月30日撮影)
御者のシュテリング氏は、馬車の乗車人数にはコロナ対策の規制緩和が適用されず、一度に4、5人しか乗せられないため観光客をさばききれないと言います。そしてこうした制限が、1日1,000ユーロ(約12万3,580円)の損失の原因となっているとし、経営への不安を吐露しました。
夏休みを迎え、人の移動が加速すると同時に、ウイルスの感染者も急激に増えているドイツ。国外旅行にはストップをかける声も上がっています。観光産業を守りつつ、感染を抑制するという難しい問題が立ちはだかっています。