はじめに
中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。
日本の高校を卒業後に海外の大学へ直接進学する学生が徐々に増えています。学校によっては積極的に支援する体制を整えているところもあります。
子どもの中学受験を考えている保護者は、志望校の国内大学の進学状況だけでなく、海外大学への進学者数も気になるかもしれません。海外大学へ積極的に挑戦する高校生たちには何か共通点があるのでしょうか。
今回の中学受験に関する数字…36人
一般の高校生が海外大学を目指す時代に
<タカの目>(高橋真実)
今回の数字は、前回に続いて開成高等学校に関する数字です。36人。これは開成高校の2020年海外大学合格者数です。このうち、ケンブリッジ大学やイェール大学などに10人が進学(開成高校「大学入試結果2020年」)しています。
前回ご紹介した東大合格者共学校トップの渋谷教育学園幕張高等学校では海外大学合格者は27人。この内訳は一般生10人、帰国生17人(渋谷教育学園幕張高校「主な大学への合格状況」)。帰国生のみならず、幅広く海外大学進学志向が広がっていることがわかります。
トップ層の進学校だけではなく、数こそ少ないものの、首都圏の私学を中心に、多くの高校で海外大学に直接進学するケースが見られ、その数は徐々に増える傾向にあります。
こうした進路選択を、学校として積極的に支援する動きも増えています。
開成高校では、海外大学に進学した卒業生が自らの経験を後輩に話す機会を設け、国内だけにとらわれない幅広い進路選択を考えさせています。また、教員をアメリカに派遣して大学を視察、入試のシステム等について調査をするといった組織的な支援も行っています。
渋谷教育学園幕張高校でも、海外大学進学専門カウンセラーを中心とする組織的な支援体制が整っています。
武蔵は経済的支援も
経済的な支援を行う学校もあります。武蔵高等学校中学校では、海外大学進学を目指す生徒には準備費用として最高100万円まで、進学が決まった生徒には大学の初年度納付金の一部もしくは全額を最大500万円まで、審査の上給付する制度を設けています。武蔵を受験するお子さんの保護者に対するマスコミの取材では、こうした支援制度が志望校選択の理由の1つであるとの答えが複数ありました。
海外大学進学者の増加の背景には、グローバル化が進む社会で我が子に活躍してほしいという、保護者の価値観の変化があります。
また、グローバル教育の強化も影響しています。私立中学・高校を中心に、英語教育の拡充を図る一方、海外研修や留学を学校のプログラムとして実施する学校が増え、海外大学への関心を持ち、その魅力に接する機会が増えています。研修や留学経験によって、海外で生活し学ぶことに対するハードルが下がっていることも背景の1つと考えられます。
海外大学への進学が増えることは、国内の大学にも何等か影響をおよぼしていくのでしょうか。