はじめに
実際は内部告発が鍵に
また、今シリーズでクラウド上の隠し部屋を捜索された半沢直樹は、「(黒崎検査官は過去2回)こちらの情報は全て調べてきていました」とコメントしています。
ドラマでは、黒崎検査官がこうした機密情報を把握した経緯は詳しく描かれていませんが、「内部告発」の可能性を疑わせるシーンもありました。
私も日本銀行の考査チームとして、民間銀行の考査に数十回出動した経験がありますが、実際に内部告発は時々ありました。特に、経営状況が厳しかったり問題案件を抱えていたりする金融機関こそ、重要な内部告発が寄せられる傾向がありました。
金融機関における内部告発は、半沢直樹に書かれているような人事上の派閥争いなどを背景にするよりも、問題ある融資案件やパワハラなど強い憤りを持つ真面目な銀行員が検査チームに告発してくるケースが多かったように思います。つまり、大きな問題のある金融機関を内部から正そうという自浄作用として内部告発が機能していることが多いという印象です。
検査チームは、内部告発をそのまま信じるわけではなく、それらの中から真に重要なものを選び取り、実地検査で証拠を掴んだ上で指摘し、改善を促すことになります。
内部告発をもとにした調査は、金融庁検査における重要な検査手法なのです。