はじめに

同じ検査官が長年担当

黒崎検査官は、第3話で登場するシーンで半沢直樹に「お久しぶりね」と挨拶します。また、一連の検査が終わったところで、「またね」と挨拶して帰っていきます。

実は、実際の検査の場でもこうしたことは頻繁に起こっています。

金融庁の検査は経験がものを言う世界で、検査官はプロとして長年検査を担当することになります。一方、金融機関の側でも、営業や融資などの優秀な担当者ほど、何度も検査で金融庁への説明を担当し、2回、3回と金融庁の同じ検査官と対決、ということが実際によく起こっているのです。

もちろん、重要な案件で見解が対立し、お互いにわだかまりが残っていることもゼロではないでしょうが、金融機関のリスク管理技術が向上している最近では、対立することは大きく減っていて、むしろ多くのケースでは金融機関の経営を健全に保つという共通の目的のもとでお互いに信頼関係を築くケースが多くなっているように思われます。

第3話のやり取りだけでは、半沢直樹と黒崎検査官の間に信頼関係が構築されているかどうかまだわかりませんが、それでも半沢直樹は、黒崎検査官は粘着質ながら検査のプロとしての手腕に一目置いているようにも見受けられます。

黒崎検査官は、オネエ言葉や粘着質な検査手法で嫌悪感を持たれがちですが、よくよくその言動を振り返ってみると、金融機関の不正や情報漏洩などの問題を憎み、暴こうとする正義感が感じられ、検査官の鑑と捉えることもできるように思います。

半沢直樹は、第5話以降の後半、帝国航空の再建にテーマが移りますが、重要な局面で必ず再登場すると思われる黒崎検査官について、今度は「正義感に燃える優秀な検査官」という視点で捉えてみませんか。そうすれば、「粘着系のニューヒーロー」としての新たな魅力がみえてくるかもしれません。

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