はじめに

8月に入っても米国株高が続き、12日にS&P 500指数はコロナショック前の2月の最高値水準にあと数ポイントまで上昇しました。今年も多くの他の先進国対比で米国株はアウトパフォームしていますが、米国の株高を支えているのは、コロナショック対応で繰り出された金融財政政策だと筆者は考えています。


米国株高を支える大規模財政出動

財政政策については、トランプ政権はコロナ禍への対応として、GDP対比の財政赤字を20%まで増やす勢いで財政政策を発動しています。これは、第二次世界大戦以来の大きな規模の政策をスピーディーに繰り出していることを意味します。拡張財政が生み出す大規模なマネーが、経済活動のダメージを和らげそして金融市場のリスクマネーの源泉となっています。

金融政策については、FRB(連邦準備理事会)による果敢な金融緩和により超低金利が長引くとの期待が高まり、それが株高を強く支えています。米国株市場においては、いわゆるGAFAMなどの株高が上昇を牽引していますが、一部のグロース株はPERなどの指標で見れば割高と言える領域まで上昇しています。

これらの企業がコロナ後の勝ち組になるとの期待もありますが、GAFAM銘柄などのバリュエーション上昇の最大の要因は、リスク資産の割引率となる金利を操作する金融政策への強い信認にあると筆者は見ています。

このため、米国の経済政策が今後変化する、あるいは政策の舵取りを行う政治体制が変われば、米国株を取り巻く市場心理も大きく変わるでしょう。

トランプ大統領と民主党バイデン候補、政策の違いは?

7月末からメディアで報じられていますが、家計への所得補償政策として大きな役割を果たしてきた週600ドルの失業給付上乗せ措置が7月末に失効しており、追加の財政政策を巡る米与野党間の協議が8月に入っても膠着したままです。

一方で、7月末に示された共和党の追加財政案には第2弾の現金給付3000億ドルが含まれており、これが秋口までの家計所得を支えると判断しています。また、追加財政政策を巡る協議が進まない中で、トランプ大統領は、8月8日に失業給付の週400ドル上乗せなどの大統領令に署名しました。これは、新たな財政政策ではなく、今後追加財政政策が実現するまでの「繋ぎの役割」と位置づけられますが、財政政策を重視するトランプ政権の姿勢が揺るがないことを示しています。

これらを踏まえると、一定の可能性があると筆者が7月までは懸念していた、「財政の崖」が実現するリスクは低下していると考えています。更に、トランプ大統領は、キャピタルゲイン減税や給与税減税を行う可能性にも言及しています。民間部門への税負担を軽減しながら、財政政策を強化する姿勢はほぼ一貫していると言えます。

一方、バイデン氏が大統領候補となることがほぼ確実になっている民主党も、コロナ対策として財政政策を活用する姿勢はトランプ政権と一見似ているように見えます。ただ、政策メニューを見ると、増税を掲げながら、環境・インフラ関連の投資拡大を掲げるなど、公的部門の役割・関与を拡大させながら財政政策を強化するのが民主党の財政政策の特徴です。

<写真:ロイター/アフロ>

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