はじめに
「オンナを武器にして何が悪い」と思っていたと言う女性がいます。男性の下心や恋心を利用してトクをするのがなぜいけないのかわからない、と。そうやって生き抜いてきた女性が、30代半ばになって今思うこととは――。
男の気持ちを利用してもいいと思っていた
「媚びるというのはイヤな感じですが、男性が奢ってくれたりプレゼントしてくれたりするのを、私は拒む理由はないと思うんです」
そう言うのはマリカさん(35歳)です。理系の彼女は大学時代も男子に囲まれた生活だったそう。そんな中で、「オンナとしてうまく立ち回る術」を身につけていきました。
「大学の別の学部に通う女友だちは、『デートは割り勘。そんなところで借りを作るのはイヤ』と言っていましたけど、私はデートに誘ってもらったら払ってくれて当たり前という顔をしていました。同じ学歴をもっていても、女性は生涯賃金だって結局は男性より低いんですよね。そういう社会の矛盾を作り出したのは男社会なのだから、私はその差額をきっちりいただきましょうと思っていた」
学生時代は、いわゆる「お坊ちゃん」系の男子とばかりつきあい、いつも奢ってもらっていたそうです。
母子家庭で育って
「私は地方から出てきたんですが、うち、母子家庭なんです。だから奨学金をもらいながら必死でバイトもして暮らしていました。勉強もがんばりましたよ。だから短時間で稼げる水商売で働いていたんだけど、男はこういう女性に惜しみなくお金を使うのかと学びましたから、お坊ちゃんを持ち上げて、いつもおいしいものをごちそうになっていました(笑)」
小さいころ、父親はマリカさんが産まれる前に亡くなったと母親から聞かされていました。だが実際にはマリカさんを妊娠中、つきあっていた人にいきなり逃げられたのだといいます。高校生のころそれを聞かされ、マリカさんの心の中で「何かが変わった」そうです。
「男を恨むとか父を憎むとか、そういうことではないんです。ただ、私ならもうちょっとうまく立ち回ることができるような気がしたんですよね。そういう男たちの気持ちを逆手にとって」
とはいえ、自分もいろいろな意味で実力をつけなければいけない。そう思ったので彼女は大学をいい成績で卒業すると、とある研究所で研究職につきました。こちらも圧倒的に男性の多い職場です。
「学生時代も仕事を始めてからも、恋愛に関しては一歩引いているというか冷めていました。つきあってほしいと言われ、好みの相手だとつきあいますけど、周りが見えなくなるほど好きになったことはありません。むしろ、どうやってこの人でトクができるのかという目で見てしまう。だからメリットのない人とはつきあってきませんでした」
水商売で知り合った「大人の男性」たちからは、さまざまな恩恵を受けました。オンナを武器にすればトクをすると知ってしまったのです。
彼女の家賃を払ってくれる男性もいたし、おこづかいとして毎月、お金を振り込んでくれる人もいるそうです。