はじめに
暑い夏です。夏が暑いとビールや清涼飲料水が売れるため関連株が上昇しますし、経済全体で見てもエアコンが売れたり、夏物関連の消費が良くなることから株式市場全体もそれを反映して上昇します。
しかし、それにはちょっと注意が必要だというお話を2018年の7月20日の記事「『夏が“特に”暑いと株価が高い』って本当?」で取り上げました。過去のデータからの分析では極度に暑いと8月の株価にはマイナスとの結果が見られました。あまりに暑いと、むしろ外出を控えて消費が減ることが背景にあると考えます。猛暑と8月の株価は意外に単純な関係ではないようです。
では9月の株価はどうなるのでしょうか。実は、残暑と9月の株価にはとても単純な関係があります。このところの気象予報では残暑が厳しくなるとの見込みがあるようですが、今回は残暑と株価の関係を紹介します。
まず、分析結果からお話ししましょう。
気象庁のウェブサイトから、1970年から2019年まで50年分の9月の気温データが取得できます。そこで真夏日と言われる30度以上になった日が9月の東京で何日あったかに着目します。9月は30日までありますが、3分の1となる「10日以上」が真夏日を記録したのは50年分のうち17年ありました。その17年分の9月相場を対象に日経平均株価の騰落率を平均してみると▲1.82%と下落しています。
つまり残暑が厳しい9月は相場が下落する傾向があるようです。
一方、真夏日が「3日以下」と涼しい9月は12回ありましたが、それらの月間の日経平均株価の騰落率を平均すると0.07%と上昇しました。
過ごしやすい9月相場は上昇する傾向が見られます。
では何故、“残暑が厳しい9月相場は株安となり、涼しい9月は株高”となるのでしょうか。
理由として考えられるのは秋物消費が盛り上がらないからでしょう。衣料品を例にあげると、暑さが続くと薄着で過ごしてしまい、秋物を買わずに冬物に移行してしまいがちです。
また秋と言えば「食欲の秋」「スポーツの秋」とも言われます。涼しくなってきて食欲も盛り上がってきたり、運動を始めたりと人間の行動が活発化しやすい時期ですが、暑いままだとなかなか、そういった気持ちに向かいにくいことも消費停滞につながるでしょう。
確認のために、もう1つの結果も紹介しましょう。9月の平均気温別に分類した日経平均株価の騰落率を集計しましたが、同じような結果になりました。
平均気温が「25度超」となった残暑が厳しい9月相場は▲1.30%と下落しています。一方、平均気温が「22度以下」の涼しい9月相場は1.02%の上昇でした。やはり残暑が厳しい9月は株安傾向となっています。
気象庁は9月からの3ヵ月予測を8月25日頃に発表予定です。
今のところ残暑が厳しいと言われてはいますが、9月相場を見る上でチェックしておきたい情報です。