はじめに
自治体の施策も大きな効果
筆者がホテル評論家となって以来、約8年間にわたり定点観測的に取材している群馬県高崎市の「ホテル ココ・グラン高崎」へはコロナ禍において3回ほど取材を試みました。1回目は3月、2回目は6月、そして今回3度目の取材が実現できました。こちらのホテルは宿泊特化型ホテルですが、ビジネスホテルというにはデザイン性やデラックス感、高付加価値的なサービスが特色で、地方都市のホテルにして全国区の人気を誇ります(当連載でも掲載)。
コロナ禍以前であれば稼働率は平均9割だったとのこと。東京から完全な日帰り圏にして、訪日外国人旅行者の恩恵は限定的とされる高崎市のホテルにしては注目すべき数字かと思われます。そんなホテルでも他のホテル同様にコロナ禍の影響は甚大で、特に緊急事態宣言下では惨憺たるものだったといいます。そんなコロナ禍の営業において稼働率上昇のきっかけだったのが、実はGoToに先駆けてなされた自治体による施策でした。6月5日宿泊分からスタートした、「愛郷ぐんまプロジェクト『泊まって!応援キャンペーン』」(現在は終了)の効果は絶大で、宿泊者の4割ほどがキャンペーン利用者だったといいます。
続くGoToトラベルキャンペーンにおいても、ホテル全体でいえばその効果は宿泊者全体の65%ほどだとし(直販15%/OTA(いわゆる予約サイト)50%)、取材時点での8月の稼働率は7割ほどまで回復しているとのことで、前月の愛郷ぐんまプロジェクトで戻した稼働率を維持できているといいます。GoToの利用者は群馬県内か隣県といったところで、遠隔地への移動が忌避される中で、やはり東京除外は想定外だったようです。
料金を下げれば稼働率は上がる?
稼働率の話をしましたが、ホテルの業績で重要な指標は稼働率(OCC)もそうですが“ADR”やRevPAR(レヴパー)とされます。ADRとは平均客室単価のことで客室がいくらで売れているかがわかります。一方、RevPARは販売可能な客室1室あたりの収益を表す値のことを指しますが、これが重視されるのは一般的に料金を下げると稼働率は上がるという表裏一体の関係があるからです。
ホテルの料金は曜日やシーズンなどで変動させるのが一般的。一方、少数派ですが基本的に変動させないことをポリシーにしているホテルもあります。ホテル ココ・グラン高崎もそんな少数派ホテルのひとつで祝前日でも1,000円程度の差です(特定日は例外)。
GoTo下において、高崎市内でココ・グラン並の稼働を出したビジネスホテルもありましたが軒並みかなり料金を下げていました(ココ・グラン料金の6割程度)。料金を変動しなくとも稼働を維持できているココ・グランについて言えば、閑散日でも泊まる人は泊まるという付加価値をもって選ばれるホテルの実力を感じます。
フロントスタッフの話として、ある客が「あからさまに料金を下げるホテルは逆に心配」という話をしていたといいます。話は逸れてしまいましたが、同ホテルのかような開業時から一貫しているポリシー誕生の背景や、リードタイム(宿泊日と予約日の間の日数)と料金設定の考え方についても詳しく取材もしていますので、これらについては別の機会に譲ることにします。