はじめに
コロナ禍で、派遣やアルバイトで生活していた人の中には苦しい状況に陥っている女性も多くいます。自粛期間中は仕事もなく、つきあっていた彼にも会えず、「本当に孤独だった」と話してくれた女性も。
いきなりクビになってしまった
「派遣元から連絡をもらったのが4月半ばでした。緊急事態宣言が出てから1週間後くらい。派遣先から仕事がないのでもう来なくていいとのことで。ショックでしたよ、どうやって生活していけばいいんだと」
苦しそうな表情でそう話してくれたのは、カヨさん(32歳)です。彼女は大学を卒業して有名企業に就職しましたが、3年たたずに退職しています。
「人間関係で躓きました。私、体育会系の人間なので、いつも元気で誰とでも仲良くなれるのが自慢だったんです。だけど会社ではむずかしかった。女性上司と先輩に嫌われて、どうしても自分が自分らしくいられなくなって。まさかそんなことでつまづくとは思っていなかったので、私自身がショックを受けました。3ヵ月ほど精神科に入院して、ようやく社会復帰したんですが、なかなか正社員になれないまま30歳を迎えてしまったんです」
葛藤しながらも頑張っていたのに…
自分はダメな人間だ、いやそんなはずはない。その葛藤の繰り返しだったといいます。それでも最後に派遣されていた会社では、いずれ正社員にという話もありました。だから張り切って働いていたのです。それなのにクビとは。彼女の衝撃の大きさがわかります。
「貯金だってそんなにあるわけではないので、本当に困りました。近所のコンビニで働かせてもらえることにはなったんですが、働きたい人が多かったのか1日数時間がせいぜいで」
彼女は社内につきあっている同世代の男性がいました。つきあい始めてまだ7ヵ月ほどだったのですが、彼だけが相談相手になってくれたそうです。
「クビになったことを一緒に怒ってくれたのはありがたかった。だけど彼に甘えるわけにもいかないし、彼はその会社の側の人だし、私も複雑な気持ちでしたね」
せめて生活費の足しにと彼は、ときどき「少なくてごめん」と言いながら1万円くれたそうです。助かるのは確かですが、彼女はだんだん惨めな気持ちになっていきました。