はじめに

戻らない関係

そしていきなり夫婦関係調整調停を起こしたと彼の弁護士から手紙が送られてきました。当事者だけの話し合いを飛び越えて、彼は突然、離婚したいと表明したわけです。

「結婚して1年足らずですよ。あまりに性急すぎる。しかたがないので私も弁護士をつけて調停に臨みました」

その時点で彼女は妊娠に気づきます。弁護士を通してそれを告げても、彼のほうは態度が変わりませんでした。離婚してもいいかと思っていた彼女ですが、気持ちに変化がありました。こうなったら離婚はしたくないと感じたのです。調停はあっけなく不調に終わり、これから裁判へと事態は進んでいきそうです。最初からボタンの掛け違いがあったのでしょうか。

「何もかも知って結婚するというわけではないと思うんです。交際期間が短かったのは確かですが、お互いに結婚を意識して出会っているのだから短くても不思議はない。最初からお金のことをきちんとすりあわせておかなかったのが問題なんでしょうね。でもみんなそんなにきちんと経済的なことを知ってから結婚するんでしょうか」

ヨシエさんは困惑気味にそう話します。彼女の言う「不毛な争い」はこれからが本番。そしてあと数ヶ月で彼女は出産を迎えます。

「これからは養育費を求めていく争いになりそうです。私の結婚は何だったんだろう、私は何を求めて結婚したんだろう。最近はそんなことばかり考えています」

とはいえ子どもに罪はありません。こうなったら子どものことを最優先にしていくしかない。彼女は気持ちを切り替えているそうです。

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