はじめに

価値観が違いすぎた

夫婦といえども他人ですから、価値観が違うのは当たり前。生活を送っていく上で、そこをどうやってすりあわせるかが大事なのでしょう。すりあわせができるかどうかが、うまくいくかどうかの分かれ目なのかもしれません。

「家賃をはじめ生活にかかる費用は収入のバランスに応じて分担ということで話がついていました。だけど彼、それ以外のお金を出そうとしないんですよね。結婚してすぐ、夫の親戚が亡くなったんです。急だったのでお通夜の場で夫と待ち合わせたんですが、お香典を用意してきていない。そんなことだと思って私が準備して行ったら、中に入れるお金がない、と。お世話になった人へプレゼントをするときも、義父母が家に来てお鮨をとったときも、みんな私が支払っています。3ヶ月ほどたって、不測の出費がこれだけあったと彼にメモを見せたんですが、反応はありませんでした」

感性が豊かだと思っていた彼ですが、妻の心に寄り添ったり共感したりするのは苦手なのではないかとヨシエさんは考えるようになりました。

「妻となったら他人ではない。彼はそう思っているようでしたが、妻の財布は自分のもの、自分の財布は自分のものなんですよね。それはおかしいでしょと何度も話し合おうとしたけど、のらりくらりしていて話し合いにならない」

そういう話を出さなければ彼は穏やかな人なのですが、このままでは将来が不安すぎます。業を煮やした彼女は、ついに夫の両親と自分の両親に来てもらって話し合いの場をもちました。現状が続くようでは生活が維持できない、と訴えたのです。そこで夫はようやく収入に関する情報を開示しました。

「私の1.5倍くらいありました。これだけあるならもっと負担してほしい。貯金はどのくらいあるのかと聞くと、ほとんどないと言う。呆れました。何に使っているのかは不明でしたが。夫の両親は『こんなふうに息子を貶めるなんて』と怒りだして。うちの両親は『娘にばかり負担を強いるのは人としてどうなのか』と逆襲するし。両親同士が言い争いを始めて、思っているのと違う方向にいってしまって焦りました。夫だけが他人事のような顔をしていましたね」

ふたり合わせた世帯収入は一般と比べても多いのに、貯蓄しているのは彼女だけ。急な出費をまかなうのも彼女。腑に落ちないと思っても当然です。両親を交えての話し合い後、夫との仲はぎくしゃくしはじめました。すると夫は「こんなのはもう嫌だ」と家を出て行ってしまったのです。

「あまりに急な展開でびっくりしました。話し合って解決していきたいだけなのに、夫は荷物をまとめて実家に帰ってしまったんです」