はじめに
デフレが怖い理由をしっかり学ぼう
このような話をすると、「モノの値段が下がるんだから、家計にとってはプラスなんじゃないですか?」というコメントをもらうことがありますが、それは違います。前述の例をもう一度引用してみます。
何かしらの要因で景気が悪くなり、人々が節約をし始めてモノが売れにくくなってきたとしましょう。そうなると、企業はモノを売るために値段を下げます。
たしかに、この部分だけを見れば、モノが安く買えるようになるからラッキーと思うかもしれませんが、多くの人が普段は企業で働き給料をもらっています。家計としての立場だけではなく、企業に勤めている自分のことにも考えを巡らせてみましょう。
モノが売れず値段を下げて売った場合、売上は値段と数量を掛け合わせたものですから、売れた量がこれまでと同じであれば、値段を下げた分、売上も減ってしまいます。企業はボランティアではなく、利益を出すことが必要なので、なんとかして利益を出せるように施策を打ちます。原材料の値段が都合よく下がることはまずないですから、そうなると人件費を下げるか、計画していた投資をやめるなどの判断が必要になります。
人件費を下げるとなると、ボーナスをカットしたり、予定していた昇給を見送ったりもあるでしょうし、最悪の場合は解雇もあるでしょう。収入が下がった人々は今まで以上に節約をします。そうなると、企業は更に値段を下げます。
この繰り返しでどんどん景気が悪くなり、物価が下がり続ける悪循環を「デフレスパイラル」とも言います。どうでしょうか。デフレは歓迎すべきものだと思いますか?
デフレの時代は現金が王様?
仮に再びデフレに突入した場合、私たちはどうすればよいのでしょうか。デフレの時は「Cash is King」という言葉や、「株はインフレに強いが、デフレに弱い」という言葉を耳にする機会が増えます。これらの言葉通り、現金の比率を増やすのもいいでしょう。
しかし、最近では他の資産の名前を耳にする機会も増えてきました。それは「金」です。金はインフレ対策という印象の方が強いかもしれませんが、デフレ下において企業がどんどん潰れていくようになっても、金が倒産することはなく、実物の価値はそこまで下がらないというのが理由です。
総務省は消費者物価指数を発表する際に、2019年10月実施の消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響を品目ごとに機械的に一律に調整した指数「消費税調整済指数」というデータも同時に発表しています。
その指数では、総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が順に同-0.1%、同-0.8%、同-0.4%と3指数ともにマイナスとなっています。来月もこのようなデータが発表されるようであれば、デフレ突入の事態についても真剣に考えた方がいいといえます。これを機に、消費者物価指数にも注目してみましょう。