はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
妻の父親が東京に土地を持っており、その土地を私達に譲ってくれるという話をもらっています。相談した結果、1,000万程度をこちらが支払おうと思っています。それでも従来の土地価格の半額か、それ以上です。無償ではなく有償になった理由としては、義理の両親の方でも多少のお金が必要だったためです。ただ、私が1,000万を今すぐに用意できるわけではないので銀行から借りる必要があります。そこで、以下の3点について可否や詳細を教えていただきたいのです。
(1)そもそも義理の父親の土地を購入する目的で、ローンを組むことができるのか。
(2)本来の価格よりも安い値段で、自身が保有する土地を義理の息子に売ることができるのか。
(3)またそれらのやりとりが発生することによって、贈与税・相続税などの諸税金はどれくらい発生するのか。
また、それが困難であった場合、“義理の親の土地を本来よりも安い価格で、かつ税金を抑えた形で売買する”別の方法や、いったん土地を借りて住居を建ててから、徐々に土地の贈与を行うことが可能なのか、などについて教えていただきたいです。よろしくお願いします。
(30代前半 既婚・子供1人 男性)
深野: 奥様のお父様が保有する土地を譲ってもらう件に関するご質問ですが、早速1番目の借入れから順番に回答させていただきます。
借入れはメガバンクよりも地銀や信用金庫に
義理のお父様が保有する土地の取得を目的としたローンを組むことですが、広義の住宅ローンという名目で借り入れるのは難しい気がします。ただ、個別の銀行では対応するところもありえるでしょうから、大変かもしれませんが1件、1件銀行を当たってみるしかないと思われます。
対応してくれるとすれば、メガバンクなどよりも地方銀行や信用金庫などの地域密着型の金融機関のほうがよいでしょう。
評価額よりも安く売買すると贈与税の対象に
評価額よりも安い価格での売買に関してですが、売買自体を成立させることは可能でしょう。
ただし、義理のお父様からの譲渡ということになるため、評価額と譲渡価格の差、たとえば評価額2,000万円・譲渡価格1,000万円の場合、その差額である1,000万円が義理のご両親からの贈与と判断される可能性があります。贈与と判断された場合、基礎控除の110万円を差し引いた890万円が贈与税の対象になるため、評価額よりも安い価格で義理のご両親から買われるのは検討し直してもよいかもしれません。
贈与税・相続税などの諸税はどのくらい発生するのかと記載されていますが、土地、購入価格、その差額等の正確な価格がわからない限り、残念ながら計算することはできません。
なお、今回の売買については贈与税が課せられる懸念はありますが、義理のお父様が亡くなられたわけではありませんので、相続税が課せられることはありません。仮に義理のお父様が亡くなったとしても、ご質問者の奥様は相続人となりますが、養子縁組でもしていない限り、ご質問者が相続人となることはありません。
税金を抑えて安く売買する、ほかの方法は?
その他の方法についてですが、私が思いつく限りでは、評価額よりも安い価格、かつ税金を押さえた価格での売買方法は残念ながらないと思われます。
土地を借りて上物はご質問者名義で建て、徐々に土地の贈与を行うパターンに関しては、毎年の基礎控除の範囲である110万円以内の贈与を行う方法がありえます。しかし、毎年110万円以内の土地を贈与され、その部分を所有権のために毎年登記を行うのはできないことではありませんが、費用等、手続きの面倒を考えるとお勧めできる方法ではありません。
また、この方法だと義理の両親にはお金が一切わたらないことから、ご質問の趣旨に反する気がしてなりません。残念ながらなんら問題が発生しないと考えられるのは、評価額で義理のお父様から譲ってもらうことだけです。その他の方法を検討したい場合は、相続・贈与、ならびに土地売買に強い税理士の先生に相談されることをおすすめいたします。