はじめに

最近の経済統計を見ると、水準は低くても改善傾向続くものが多く見られています。また、景気と密接な関係がある身近なデータでも同様な現象が見られます。

拡張、後退という景気局面の判断は水準ではなく方向性で決まるので、足元は景気拡張局面に入っている可能性が大きいと思われます。

今回は、景気改善傾向を示唆する身近なデータをご紹介した後、10月上旬に発表された8月分景気動向指数・速報値と9月調査の景気ウォッチャー調査のデータを詳しく見ていきます。

さらに、新型コロナウイルスの影響と思われる様々な数値についても取り上げ、日本の今に迫ってみたいと思います。


大相撲懸賞本数は前場所から15.2%増加

身近なデータとしてまず取り上げるのは、JRA(中央競馬会)の売得金です。今年の売得金・年初からの累計金額の前年比は、新型コロナウイルスの影響で2月29日から無観客レースとなり、ネット(ごく一部が電話)でしか馬券が購入できなくなったため、5月3日の週までの累計で▲6.2%まで悪化しました。

しかし、そこから改善し、若干ですが観客が再び入った10月11日の週までの累計前年比は+1.7%となり、10週連続で累計前年比増加となりました。

また、7~9月期の連続ドラマでは「半沢直樹」が注目されました。全話視聴率20%超、最終回に令和になっての最高視聴率32.7%を達成しています。「倍返し」のセリフに加え、今回のシリーズでは「恩返し」も話題になりました。

その「恩返し」を胸に、大相撲秋場所で初優勝したのは関脇の正代です。熊本県出身力士として初の大関に昇進し、2016年の地震に今年の豪雨と、災害に見舞われた故郷を元気づけました。

秋場所の懸賞本数は1,152本、前年比▲42.1%と厳しい数字ですが、同じ両国国技館で開催された7月場所の1,000本からは+15.2%と増加しました。

景気の基調判断は年内にも「上方への局面変化」に

ここからは最新の経済統計を詳しく見ていきましょう。

8月分の景気動向指数・速報値では、景気の現状を把握する指標である一致CIが前月差+1.1と3ヶ月連続の上昇になりました。また、一致CIの3ヶ月後方移動平均は前月差+2.74ポイント上昇し、16ヶ月ぶりの上昇になりました。

一致CIを使った景気の基調判断は、一致CIの前月差がプラス、かつ一致CIの3ヶ月後方移動平均が単月で振幅目安の0.93を上回ったので、2019年5月分~7月分以来13ヶ月ぶりの「下げ止まり」に。2020年7月分までの「悪化」から上方修正されました。

事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数ヶ月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」に「下げ止まり」から上方修正されるには、「一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7ヶ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1ヶ月、2ヶ月または3ヶ月の累積)が1標準偏差分以上振幅目安の+0.76以上になること」が必要です。

8月分では7ヶ月後方移動平均は前月差▲2.16ポイント下降し、22ヶ月連続の下降でした。過去の数字が不変だと仮定すると、9月分以降毎月一致CI前月差が+1.5の上昇が続けば、11月分で7ヶ月後方移動平均の前月差が+0.77となり、「上方への局面変化」の条件を満たすことになります。

また、12月分ではプラス幅の2ヶ月の累積が+0.76以上になる可能性が大きいと思われます。11月分か12月分には「上方への局面変化」に上方修正される可能性が大きそうです。

2018年10月を山として後退局面だった景気は5月を谷として拡張局面に戻ったことが確認されるでしょう。

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