はじめに

景気の方向性は「良くなる」も、足元の景気水準は「やや悪い」

毎月25日から月末を調査期間として、景気に敏感な立場にいる人々の意見を聞く「景気ウォッチャー調査」では、足元の景気の方向性(良くなる・悪くなる)を示す現状判断DIは、新型コロナウイルス感染症対策で緊急事態宣言が発動された4月に7.9でした。

その後、持ち直し5月15.5、6月38.8、7月41.1、8月43.9と上昇しました。9月では49.3と、全員が「変わらない」と答えた場合の50に接近、持ち直しの動きがみられます。

一方、足元の景気の水準(良い・悪い)を示す現状水準判断DIは、4月に9.8でした。こちらもその後は持ち直し5月12.7、6月23.4、7月25.1、8月26.9、9月32.4となりました。但し、全員が「やや悪い」と答えた場合の25を少し上回る水準に留まっています。

現状判断DIと現状水準判断DIとの乖離は6月に15.4と、リーマンショックからの持ち直し時期で過去最大だった2009年6月の15.3を上回りました。その後2020年7月16.0、8月17.0、9月16.9と最大水準で推移しています。

水準は低いものの、方向的には改善傾向続いていることを示唆する数字だと考えられます。

自殺者数、失業率、地価、インフルエンザ、データから見る日本の今

最後に、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした様々な影響をみてみましょう。

心配な数字は、警察庁発表の自殺者数です。2019年8月分から2020年6月分までは自殺者数の前年同月比は減少で推移しましたが、7月分・8月分と前年同月比は増加に転じました。9月分・速報値は1,805人、前年比+8.6%と3ヶ月連続の増加になってしまいました。

新型コロナの影響が顕在化してしまった可能性もありそうです。最近は有名な芸能人の自殺が相次いでいることから、マスメディアの自殺報道に影響され自殺が増えるという「ウェルテル効果」が懸念されます。

但し、年初から9月分までの累計は14,974人、前年比▲3.5%とまだ減少は維持しています。年間で11年ぶりの増加になるか減少になるかは、予断を許さない状況です。

経済的理由などでの自殺者と関連が深い完全失業率は5月分で2.9%(2.88%)、直近ボトムの2019年12月の2.2%(2.19%)から5ヶ月連続して上昇しました。6月分は2.8%(2.83%)と一旦鈍化しましたが、7月分で2.9%(2.86%)、8月分で3.0%(2.98%)と再び上昇し、2017年5月(3.1%)以来の3%台になってしまいました。

新型コロナウイルスによる雇用面の悪影響への対策が講じられていることから、リーマンショック後の4~5%台という高水準になることは回避されると思われますが、今後の推移を、予断を持つことなく見守っていく必要があるでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大は回復基調にあった地価にも冷や水を浴びせました。新型コロナの影響を織り込んだ最初の大規模な地価調査である、今年の基準地価(7月1日時点)は、全国・全用途平均で前年比▲0.6%と3年ぶりの下落となりました。

訪日客需要が消失し繁華街や有名観光地の地価を押し上げました。三大都市圏の商業地は昨年+5.2%上昇だったものが+0.7%の上昇に鈍化しました。

コロナ禍で在宅勤務が急速に広がり、郊外や地方で働く人も増えましたが、まだ住宅地の地価を押し上げる勢いはみられません。逆に都心で働く人が減りオフィスの需給が緩んだ面があり、地価の押し下げ要因になっている面があるようです。

今シーズン8月31日から10月4日までの「学校等におけるインフルエンザ様疾患発生状況」は僅か5人で前年比▲99.9%。前年同期の6,210人を大幅に下回っています。

冬季の新型コロナウイルスとインフルエンザの同時発生を懸念する向きが多いようですが、マスク、手洗い、うがいや3密を避けるといった新型コロナ対策が、これまでのところインフルエンザの予防に役立っている面が大きそうです。

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