はじめに

高級百貨店ラファイエットの試み

これとは対照的に、実店舗の活性化に積極的なラグジュアリーを扱う企業もあります。ヨーロッパ最大のデパート「ギャラリー・ラファイエット」パリ・オスマン店です。同店は、なんとかして地元パリ、そしてヨーロッパの消費者を引きつけようと試行錯誤をしています。

ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン店

現在、継続可能な社会に貢献するブランドや商品、ユニセックスデザインなどを独自にセレクトした「Go For Good」のラインナップの宣伝に、これまで以上に積極的です。

「Go For Good」は同社が2015年に開始した取り組みで、昨今のパリ市民が持つ、高い環境意識への嗜好を反映したものです。また、ギャラリー・ラファイエットで開催される催しも、以前はマカロン教室など外国人観光客をターゲットにした内容でしたが、コロナ禍以降はDIY教室やヨガレッスンといった、地元パリの消費者に訴えかけるものが新設されています。デパートという売り場がある以上、実店舗の活性化は必至でしょう。

「こういった一連の戦略が効果を上げ、売り場は活性化している」と、同社パリ・オスマン店の営業開発責任者は説明してくれました。しかし、こうして集まった地元顧客が、高級品を買うことはまずないのだそうです。

このままハイブランドは廃れるのか

では、同デパートが扱う高級ブランドはどうなるのでしょうか。営業開発責任者は「特に新作や限定品に力を入れ、オンラインで対応して行く。定番商品は世界中の実店舗で購入できるが、新作や限定品はフランスでなければ入手できないことが多い。これらフランスでのみ購入できる商品を前にだし、オンラインで販売することで、高級ブランドの売り上げを伸ばして行く考えだ」と話します。

外国人顧客に支えられたフランスのラグジュアリー業界は、コロナ禍に弱いのか? 各社の事象を見ていくと、この答えは一言で言い表せないようです。

ただ言えるのは、この逆境の中で、高級ブランド店もニューノーマルを探りつつ、新しいビジネスの形を模索しているということ。そして「高級品のオンライン販売」という流れに、とてもパラドックスを感じます。これまでは、安い価格のものを探すためにネットショップを使うことが主流でした。一方で高級ブランドは、お客さまにはソファに座って頂いて、シャンパンをお出しして、まずはサロン風にくつろいで頂いて、という風に、接客のノウハウや「場」の演出を磨くことに努力してきました。こういった全てを含めて高級ブランドの値段でした。

これらがなくなり、例えば入手困難な高級品こそオンラインになるとしたら、接客の技術ではなく、お届けのパッケージやウェブサイトを作るデザイナーや、それ以前の戦略を考える人間に、より重点が置かれていくかもしれません。オンラインとオフラインを融合させたサービスの新形態が登場する予感があります。

〈文:Keiko Sumino-Leblanc / 加藤亨延〉

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