はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
現在、各口座で計1,900万円の現金と預金があります。ほとんどが1年ぐらいの定期預金で、あとは少しばかりの外貨預金です。持ち家はなく、月10万円の賃貸で暮らしています。今のところ住宅購入は考えておりません。保険は終身で保障は1,000万円、月3万円程の支払いです。私だけ働いており、妻は専業主婦です。年収は手取りで550万円ぐらいです。
通常の厚生年金のほかに、満期に650万円が支払われる個人年金を月1万円積み立てています。マイナス金利政策導入から1年半以上が経ち、今後に不安を持っています。どのように資産運用を行っていけばよいのか、ご助言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
(40代前半 既婚・子供1人 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
老後までに「お金に働いてもらう」状況をつくる
定期預金が資産の中心ということですから、マイナス金利の導入によって、さらに利回りが低下して、利息収入はほとんどない状態だと思います。
また、外貨資産もほとんど保有していないようですから、将来、仮に円安となると、資産が目減りしてしまう可能性があります。
そして、リタイア後は年金収入が主体になると思いますが、給付開始時期や給付額など、今後さまざまな条件が悪化していく可能性が高い状況です。
そうであれば、定年まで20年として、それまでに年金以外のお金に働いてもらえるような状況を作っておくことが重要になると思います。
例えば、リタイア後に年金プラス20万円の毎月の収入を得るという目標を立てれば、年間240万円の収入が必要になります。
そうすると、1%で運用するなら元本2億4,000万円、2%で運用するなら元本1億2,000万円、3%で運用するなら元本8,000万円、4%で運用するなら元本6,000万円が必要な計算となります。
金融資産の場合、現状の金利水準では株式と債券を組み合わせても、年平均で4%の運用を実現するには、株式中心のポートフォリオで大きなリスクを取る必要があります。
中古ワンルームで資産運用する
金融商品を使わないもう1つの運用方法としては、国内の不動産投資を行う方法があります。
都心の中古ワンルームであれば、家賃から管理費、修繕積立金などを差し引いたネットの利回りで、4%は無理のない水準になります。
空室リスク、家賃の下落リスクはありますが、都心のワンルームマンションの空室率は管理会社によっては1%以下のところもあり、信頼できる管理会社を選ぶことで、空室リスクは最小限に抑えることができます。
都心の中古ワンルームマンションは2,000万円程度の価格になりますが、お勤めであればローンの借入で、自己資金60万円程度で購入可能です。
ご相談者の場合、頭金に充当できる資金もありますから、借入をするのは難しくないと思います。ローンを組んで物件を順次購入して、最終的に3戸程度保有し、リタイアまでに返済が終われば、ローンのない不動産を3戸手に入れることができます。
その場合、家賃水準が現状レベルであれば、毎月20万円の手取りの収入が期待できます。また、ローン金利には団体信用生命保険が含まれているものもありますから、その場合は死亡保険が不要になります。その分も返済に回せば、より効率的な資産運用が可能になるでしょう。
ローンの借入期間は長めに設定して、キャッシュフローをプラスに保ちながら、繰上返済によって残高を減らして、返済を早めていく方法がよいと思います。
しかし、不動産投資には金融資産とは異なるリスクがありますから、セミナーや書籍で情報を収集して、信頼できる会社から購入して管理を任せることが重要です。
資産形成はお早めに
また外貨資産についても、今後、円安を想定するなら保有しておいた方がよいでしょう。外貨預金は為替手数料が高く、金利も低いので、インデックス型の投資信託や、FXなどを活用するのがよいでしょう。
こちらも基本的な知識を押さえてから、投資を始めることをお薦めいたします。
資産形成には時間が必要です。まだ40代前半ということで時間がありますから、早めに目標設定して、それに向けて必要なアクションを取って、自分の未来を自分で切り拓いていってください。