はじめに
全体を重んじるか、個人を優先するか
コロナ禍になってから、日本では「自粛警察」という言葉が、しばしば話題に上がりました。フランスの場合、そこで暮らしている人々が空気を読まない人々であるとは思いませんが、日本と比べて個人が意見を主張する(すべき)という環境で育ってきているため、日本より同調圧力は低いかもしれません。それが社会にとってプラスに働く場合と、働かない場合があります。
フランスでは役所など上から規制が行われると、ただ従順に従うだけではなく、それに反発しようとする人が多い印象です。「従順さ」もしくは「議論を避けること」は時に危険で、従う前に議論をして個々が内容を精査することで、社会の改善と正常化に大きく寄与します。
一方で、今回のコロナ禍のように社会全体の足並みがそろわないと防ぎきれない事象の場合、せっかくの感染予防対策が薄まってしまいます。
例えば、春先に外出制限が出された際、外出は基本禁止という上で、生活に必要な買い物や、運動などは許されていました。それを拡大解釈して、必須の買い物や運動と称して、それ以上の外出をする人たちが後を断ちませんでした。
もちろん良識あるフランス人は多いですが、日本と比べると文化的に個人の行動・幸福を優先してしまいがちな人が多いと感じます。長所は時に短所になり、短所は時に長所になります。
第二波到来中でも手洗いするフランス人は減少
実際にフランスの人々の、新型コロナウイルスに対しての危機意識は、どれくらいなのでしょうか。調査会社「ifop」が10月5日に出した統計によると、新型コロナウイルスへの懸念は徐々かつ確実に上がってきており、69%のフランス人が「自分自身または家族について心配している」と方向しています。なかでも経済についての懸念が特に高く、87%が危機を感じています。
コロナ禍が始まってからの、フランス人の衛生観念の変化はどうでしょうか。現在、第二波に見舞われているフランスですが、じつはこんなが結果が出ています。
さらに、同社の世論調査結果によると、帰宅時に手を洗うフランス人の割合は、ロックダウンが始まった今年3月が86%だったのに対し、7月は75%、10月は63%と下がり続けています。食事前に手を洗う割合も、3月の81%に対して、10月は65%まで落ちました。
トイレの後に手を洗うかという問いについても、3月の81%に対して10月は77%でした。手洗いについての衛生観念は、若者になるとさらに意識が低くなりました。