はじめに

30%という課金制度に不満を抱いていたゲーム会社

しかしなぜ、ゲーム会社は確立されたアップルやグーグルのプラットフォームが存在するにもかかわらず、ヤフーの新しい挑戦に期待するのでしょうか?

ひとつの理由は、ゲーム会社に対する課金制度にあります。これまでゲーム会社は、iOSであればアップル、Androidであればグーグルに対し、売上の30%を支払う必要がありました。

課金比率が高いことに加え、とても厳格にできていて、ゲームに関連した物販の売上を伸ばそうとした場合でもこれが“課金逃れ”だと認定されてしまえば物販自体をNGとされてしまうこともあるのです。

ヤフーの新プラットフォームではこの収益配分を見直す動きがあるようです。詳細はまだ明らかになっていませんが、基本的にはアップルやグーグルよりも好条件で募集をかけているのが今のヤフーの戦略とみられます。

ゲーム会社がヤフーを支持する最大の理由

そしてゲーム会社にとって、もうひとつ魅力的な条件があります。それは審査期間の長さです。

各プラットフォームでアプリをリリースするためには事前審査が必要なのですが、その審査には1~2週間は期間をみておかなければなりません。

またゲームのプログラムを修正したり、内容を追加したりする場合も、同様の審査が必要です。これがヤフーに移れば、すぐに変更できるようになります。

アップルの審査制度は、悪質な課金制度が入っていないかどうかや、18禁など不適切な表現をチェックする意味では重要なのですが、一方で、ゲームクリエイターが大切にする「ゲームの創造性」を浸食する行為でもありました。アップルの審査方針には反対という思いを抱く人も少なくありませんでした。

“ゲームの乱”の行方は

さて、ヤフーのビジネスモデルとしてみると、今回のゲーム参入はこれまでの成長戦略と一貫しています。

過去、ヤフーは楽天市場に支配されていたECモールの世界に対し、出店料無料などの優遇施策で攻勢をかけ、ショッピング需要を奪い取ってきました。

また電子書籍でも、アマゾンのKindleのようなアプリではなく、ブラウザで書籍を簡単に閲覧できる方法で本の販売を行っています。

これらの延長線上に今回のゲームプラスがあるわけですが、“仲間”を取り込む手法は過去の戦略とまったく同じ。となれば、Yahoo!ショッピングが絶対王者だった楽天市場を追い込んだように、ゲームの世界でも逆転が起きるかもしれません。

そしてその先には、アップルとグーグルが支配するすべてのアプリをブラウザ経由で提供するという野望も透けてみえます。

最終的にヤフーが狙うのは7兆円といわれるアプリ市場だとすれば、今回の“ゲームの乱”の成否が未来を占う大きなカギとなりそうですね。

(文:鈴木貴博)

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