はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

現在、夫婦それぞれで普通預金、定期預金の口座を複数所有しています。また、そのなかにはほぼ使用せず、そのままにしている状況の口座もあります。ほぼ使用しない口座に数万円のお金が入っていると、ちょっとうれしい気分になるときもあります。今後、節約を行っていくためには、貯蓄の口座はひとつにまとめて、その口座に二人で貯金していくほうがよいでしょうか。

またその場合には、日々使う口座と貯蓄用口座は分けたほうがいいのでしょうか。お金が貯まる口座管理のアイデアがあれば、教えてください。
(30代 既婚 男性)


野瀬: シンプルですが面白い質問ですね。私も自分を振り返ってよくよく考えてみました。

不要になった銀行口座も閉じなくてよい

銀行口座というものは、放っておいてもドンドン増えてしまう生き物のようなものです。

理由は「会社から給与、または交通費の振込先に特定の銀行を指定された」「家賃の振込に手数料をかけないようにするために振込先と同じ口座を開いた」「住宅ローンの支払いのために」など、さまざま。さらには「今定期預金を作ったら、限定プレゼントがもらえるから」なんて理由もあるでしょう。

私も現在メインで使っている日本の銀行は、全部で6つあります。

生活費や仕事で使っているものは、やはり自宅や事務所から近い位置にATMや窓口があるかどうか、また、資産運用で使っている口座は利息のよさ、外貨預金や株式投資との連動性、あと細かい話をすれば、貸金庫等のサービスが使えるかどうかで判断しています。

これら以外にも必要があって作った、地銀や信用金庫、ゆうちょ銀行がありますが、現在はほぼ使っていません。残高も数千円程度です。

利用していない口座は閉じてしまうという方法もありますが、手続き自体が面倒ですし、仕事でもプライベートでもある日、急に口座をひとつ用意しなければいけないときもあるでしょう。

ですから、「使わない」からといって閉じる必要はないと思います。残高は数千から数万円程度に減らしておくと安全でしょう。

経験上、生活費と貯蓄の口座は分けた方がいい

さて、ここからが本題です。

まず「生活費と貯蓄の口座は分けるべきか?」ですが、結論をいうとこれは「分けるべき」です。

私自身、独身時代は生活費も貯蓄も同じ銀行口座で管理していたのですが、その経験上、積立預金でもしない限り、生活費と貯蓄を管理するのは不可能になります。

人間は弱い生き物ですので、少しお金が足りずに苦しくなると、ついつい貯蓄から使ってしまうものです。

お金を貯める一番の方法は、お金を使えなくしてしまうことです。貯金をしたい金額はさっさと別口座に振り替えて、その銀行カードは持ち歩かず、自宅保管にしておくとよいでしょう。

貯蓄口座は夫婦一緒がおすすめ

「夫婦の貯蓄口座を一緒にするべきか?」についても、意見は分かれると思いますが、個人的には一緒にすべきだと思います。

将来、離婚する可能性があるなら分離すべきなのですが……、私の個人的経験から貯金には「戦友意識」が必要なので、一緒の口座で貯金すべきだと思います。

夫婦が家計でケンカする理由は「私ばかり頑張っているのに、あいつは……」という不公平感からです。

ですから、「一緒に頑張っている」という意識を育てるためにも、毎月の貯金額をそれぞれ決めたら、その金額をひとつの口座にまとめてお互いの努力が見えるようにするとよいでしょう。その預金通帳にペンで貯金の目的を書いておけば、なおよしです。

夫婦の貯金口座を別にすると、お互いに疑心暗鬼が生まれてしまいがちです。マイホームや海外旅行など、なにか二人で目的を決めて貯金するのであれば、口座はひとつにするのがおすすめです。

さらにお金が貯まる口座管理術

さらに、私がおすすめする口座管理術についてお話したいと思います。

(1)口座は用途別に分ける

先ほども触れましたが、口座は用途別に分けるべきです。

最低でも「生活費」と「貯蓄」の2つに分け、できればその貯蓄も、目的別に分けるとよいでしょう。口座間の融通を効かせると、どうしても誘惑に負けてしまいお金は貯まりにくくなります。

そして、日頃持ち歩く銀行カードは生活費口座のものだけにしましょう。こまめなATM引出しは貯金の一番の大敵です。

また、銀行によって定期預金の金利は何倍も違いますので、特に貯金用の口座についてはしっかり金利を調べてから口座を開いてください。

(2)貯蓄には目的を定める

「目的なき貯金」は絶対に成功しません。ランニングと同じで、貯蓄というのは基本的には「我慢」なのです。

ランニングに「マラソン大会にでる」「痩せてモテたい」というような目標が必要なように、貯金にも「マイホーム」「独立」「ハワイ旅行」などの目的が絶対に必要です。

(3)基本はご主人の給料だけで回るように

ダブルインカムの夫婦が陥りやすい点なのですが、自由になるお金が多いため、生活費が高くなってしまいがちです。

もし、お子さんが生まれるなど共働きでない期間が生じた場合、しばらくの間奥様は勤務できなくなるので、最低でも基本的な生活はご主人の給料だけで回る家計にしておきましょう。

(4)余剰資金は機械的に振り分ける

つまり、今のうちから奥様の給料はすべて貯金・運用に回すのです。そして、その割合を固定しておくとよいでしょう。

私も以前は私の給料で基本の生活を回し、家内の給料は以下のように機械的に振り分けて運用していました。

4分の1:不動産用(不動産を買うための頭金積立)

4分の1:株式投資用(株や投資信託を買うため)

4分の1:貯金用(定期預金)

4分の1:交際費用(冠婚葬祭や、急な飲み会など用のストック)

キーワードは「機械的」です。とにかく貯金や投資に感情をはさんではダメです。機械的にやるのです。生活費に余剰金が生まれた場合も、その余剰金を機械的に貯金用口座に振込むという形です。

以上が、私が実践している基本的な口座管理です。

もちろん、口座が増えると管理も大変になります。そのあたりはマネーフォワードを使って一元管理すると便利だと思います。

通常「我慢」のイメージが強い家計管理も、「目標」をもって夫婦で取り組むと戦友意識もでますし、その結果、毎月末パソコン画面で残高が増えるのを眺めながら夫婦でニヤニヤできると素敵だと思います(笑)。

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