はじめに

数十年ぶりの再会、試乗してみる

そんな恋心を抱いていたクルマと取材先で数十年ぶりの再会です。訪れたのはシトロエンのスペシャルショップ「ジャベル」さん。代表を務める竹村洋一氏は、もちろん筋金入りのシトロエン好きです。ショップでは最新のモデルも扱いますが、GS/GSAを始めとして、名車として人気のDS、CX、SMといったシトロエンのオールドモデルも得意としています。その手掛けた車両の美しさから、ファッション誌などの撮影にも貸し出しを行うこともあります。

そんなショップ内で取材を進めるうちに「GS、試乗してみますか?」という魅惑的なお話が飛び出しました。もちろん断る理由はありませんので、お願いすることに。目の前に現れたのは、竹村さんご自身が、ときどき使用しているという76年式のGSパラス、走行距離3万9千キロという車両でした。西武自動車販売で輸入された正規ものという、希少車だそうです。

外観や細部には年式なりの、使用感は見られますが、そのいい感じに使い込まれた雰囲気が、いまも実用として活躍していることがよく分かります。実際に中身は「つねに走らせているクルマですから、しっかりと整備は行っています」と竹村さん。当然のことでしょう。シトロエンのスペシャルショップでありながら、自分の車が立ち往生しているというのでは、そのお店の沽券に関わるというものです。行き届いた整備によって、日常的にもストレスなく使える車両と説明を受けました。

以前、日本を代表する名車を開発したあるエンジニアさんに「クルマというのは使うべき状況で、しっかり使ってやらないと、かえって壊れるものです。クルマは止まっている時間の長さに比例して壊れやすくなるんです」といわれたことがあります。つまり動かさずに飾ってある、座敷車ほど壊れやすくなると言うことです。それに照らせば、竹村さんから用意して頂いた車両は、毎日快調に走り回っているため、試乗での期待度はどんどん高くなります。

さっそく、上にスライドさせて開けるという独特のドアハンドルを操作してドアを開けました。見るからにソフトさが伝わってくる布シートが現れます。腰を下ろすと「これでちゃんと支えられるのか?」と思うほど頼りなげで柔らかなシートなんですが、不思議なことに体にはピタリとフィットし、そしてしっかりと支えてくれるのです。

見るからにソフトで座り心地の良さそうなシートは体をしっかりと支えてくれます

目の前には、こんなにシンプルでエレガントなメーターパネルは他にあるだろうか? と思えるほど美しい景色が広がります。ボビンメーターと呼ばれる美しい速度メーターが、本当に魅力的です。そんなインテリアを眺めながらキーをひねると1.2Lの空冷水平対向4気筒エンジンは一発で目覚めました。でもそのサウンドはゴロゴロゴロという感じでなんとも頼りないサウンドを発します。

シンプルですが上品さと華やかさを感じさせてくれるメーターパネル