はじめに
共感が得られるように書く
自分の感情をわかってほしい、と思うあまりに、強調表現や凝った表現を使い過ぎると、読み手は押し付けがましさを感じて共感してくれません。事実に淡々と語らせたほうが、かえって読み手の心を動かします。
3つの文例を見ていきましょう。
1.強調語を使い過ぎない
【文例4】
この経験から、自分に目標と強い意志があれば、どんな難しいことでも必ず達成できるということを学びました。
就活生の自己PR文でしょうか。自分を売り込みたい気持ちはわかりますが、「どんな難しいことでも必ず達成できる」は誇張でしょう。
阿部さんが見たある学生の「志望動機」には、「極める」「猛勉強」「心から」「涙が出そうに」「必ずと言っていいほど」「感激」などの強調語が詰め込まれていたそうです。逆効果ですね。
【改善案】
この経験から、自分に目標と強い意志があれば、難しいことでも達成できるということを学びました。
(『文章力を伸ばす』156ページ)
2.凝った表現は避ける
【文例5】
高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動している自分がいた。
「自分がいた」「自分の中で」といった表現を使う人が増えていますが、ちょっと思わせぶりで格好つけているな、と感じる読み手も多いので気をつけましょう。
【改善案】
高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動していた。
(『文章力を伸ばす』157ページ)
3.自分のことも、事実に淡々と語らせる
【文例6】
私は高い想像力を持っています。自分が経験したことのないことでも自分に置き換えて想像をすることができるので、人の気持ちになって考え、その気持ちを理解することができます。
これもある人が書いた自己PR文ですが、このような、手放しで自分を礼賛する文章は共感されません。普段の人間関係と同じで、やや控えめで謙虚さが見える文章の方が好感を持たれるでしょう。
【改善案】
私は相手の身になって感じたり考えたりする想像力を磨こうと、いつも心がけています。
(『文章力を伸ばす』161ページ)
阿部さんは『文章力を伸ばす』の序章において、「書く力は、考える力そのものです」と指摘しています。
自分の考えを文章で相手に伝えるためには、考えていることを誰にでもわかるように組み立てて、共感が得られるように表現することが求められます。したがって、文章力を磨くことは思考力を磨くことに他ならないわけです。
文章力は、社会人として、学生として、あるいは1 人の人間として、さまざまな可能性を広げてくれる能力なのです。
(『文章力を伸ばす』序章より
文章を書くことが好きな人も嫌いな人も、「書くこと」にもっとチャレンジして、文章力を磨いてみませんか?
(記事提供:日本実業出版社)
『文章力を伸ばす』 阿部紘久 著
30万部のベストセラー『文章力の基本』が進化し、6000件の文章指導のポイントを集大成した最新作。「受け手発想で書く」「意味の狭い言葉を使う」など、陥りがちなポイントを81に整理して、原文と改善例の対比によってわかりやすく解説。