はじめに

まだ食べられる食品が売れ残りや食べ残しの影響で破棄されてしまう「食品ロス」。

日本では年間632万トンの食品ロスが発生し、国民一人あたりに換算すると毎日“お茶碗1杯分”の食べ物が捨てられていることになります。これは全世界の食糧援助量の約2倍に相当する膨大な量です。

2015年の国連持続可能な開発サミットでは、「2030年までにフードロスの50%削減」を決議。社会的な問題として国をあげた対策が始まり、私たちに身近な商品にもさまざまな変化が表れています。


賞味期限の表示が変わる

味の素は8月より、クノールカップスープや鍋キューブ、スリムアップシュガーなど主力73品目の賞味期限を従来の「年月日」表示から「年月」表示に変更、あわせて賞味期間を延長する取り組みを始めました。

同社は2017年2月より惣菜中華の素3品でこの対応を実施し、今回の対象拡大に踏み切ったかたちになります。今後は2019年度を目処に、残りの約90品目でも年月表示を進め、移行完了を目指します。

賞味期限表示変更の例(味の素株式会社プレスリリースより)

加工食品には「消費期限」と「賞味期限」いずれかの表示があり、前者はお弁当やケーキなど品質劣化が早い食品の「食べても安全な期間」を指します。つまり、期限をすぎた商品を食べることは危険です。

しかし、スナック菓子やカップ麺、レトルト食品などで採用される後者の賞味期限は「おいしく食べられる期限」を意味し、これを超えるとすぐに食べられなくなるわけではありません。

しかし、心理的に「1日でも過ぎたものを食べるのは……」という思いを抱くことはいなめず、また販売もできなくなるため、多くの食べ物が即座に破棄されているのも実情です。

製造から賞味期限までが3ヶ月を超えるものについては「年月」表示とすることが認められており、同社は今回の対応により少しでもフードロスを減らしたい考えです。

賞味期限を年月表示にする動きは、飲料やしょうゆ、お菓子など他社の商品でも始まっています。今回の味の素の取り組みを受けて、より拡がる可能性があります。

企業努力で賞味期限を延長

また、賞味期限そのものを延長する取り組みも始まっています。

キユーピーは2016年1月、「キユーピー マヨネーズ(一部容量)」と「キユーピー ハーフ」の賞味期限を従来の10ヵ月から12ヵ月に変更しました。冷蔵庫に常備されることが多い調味料は、気がついたら賞味期限が切れていた、ということが起こりやすい食品です。

しかし同社のマヨネーズの賞味期限は、実はどんどん伸びています。

1925年に日本ではじめて瓶容器入りマヨネーズを製造・販売したキユーピー。マヨネーズを長期間保存した際に、品質低下を引き起こす一因は「酸素」でした。

酸素を通しにくい多層容器の開発や、植物油中に溶け込んでいる酸素を限りなく取り除いた製法、製造工程中の酸素レベルを低下させるなど、製法や容器によって、さまざまな工夫を実施。また、キユーピーハーフでは配合の変更によって、賞味期限の延長を可能にしました。

こうした企業努力による、食品ロスへの対策も多く行われています。

日本でも拡がる「フードドライブ」

それでも期限が迫って食べきれない食品があれば、寄付するという方法もあります。

家庭で余っている食べ物を学校や職場などに持ち寄り、まとめて地域の福祉団体や施設、フードバンクなどに寄付する活動「フードドライブ」。まだ日本では馴染みない言葉ですが、国内でも少しづつ拡がりつつあります。

東京都では渋谷区・世田谷区・文京区など多くの自治体がフードドライブ活動を実施。

たとえば渋谷区では、区が開催するリサイクルバザール会場に一部ブースを設け、集まった食品をフードバンク渋谷を通じて必要とされる方々に届けます。

ただし対象となるのは以下のような食品です(渋谷区の場合)。

未開封、賞味期限(要明記)が1ヶ月以上ある、包装・外装が破損していないもので、缶詰、インスタント・レトルト食品(冷蔵・冷凍品は除く)、調味料、嗜好品、乾物、飲料(アルコール類を除く)、乳児用食品、健康食品。なお、塩・砂糖・米は、未開封であれば賞味期限の表示がなくても可

世田谷区では4月より区内の施設「エコプラザ用賀」「リサイクル千歳台」の2ヶ所において、未使用食品等の常時回収を開始。

同区内だけでも未開封・未使用のまま廃棄される食品が年間約4,500トン(清掃車約3,000台分)にも上ると推計し、集まった食品は地域の福祉団体などに寄付を行います。

このように食品ロスを減らすための対策は拡がっていますが、私たちが第一にできるのは「買い過ぎず」「使い切る」「食べ切る」といった日々の生活の工夫から。

“もったいない”を意識した食事は、食品ロスの削減になるだけでなく、家計へのメリットも。消費者庁は料理レシピサイト「クックパッド」で食材を無駄にしないレシピを公開しているので、ぜひこちらもご参考に。

(文:編集部 樫本倫子)

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