はじめに
見逃してはならない「多様性」を求める動き
脱炭素と共に、SDGs/ESGにおける潮流の一つとして注目されるのが、「多様性」を求める動きです。21年1月に発足する民主党バイデン新政権は重要ポストに女性や黒人、アジア系を配し多様性を最優先に掲げています。
資本市場でも、米証券取引委員会(SEC)による「従業員」情報開示の義務化発表(11月)に続き、米ナスダックは12月1日、取締役の多様性に関する上場基準ルールを導入する申請書をSECに提出しました。承認されれば、ジェンダー(性別)とマイノリティ(少数派)の観点での取締役1人以上の任命が義務付けられます。
日本でも来春のコーポレートガバナンス・コード(企業統治の規律)の改定で、多様性の確保(女性・外国人・中途採用の管理職への登用等)が重視される見通しです。経営層の多様性が高い企業はイノベーションによる売上高の割合が高い傾向がみられます。事業環境が不透明な中でも、多様性の確保は企業価値の向上をもたらす一手と言えるでしょう。
2020年はコロナが広がる中で、株主への利益還元だけでなく、環境や人種など企業にとって多様な利害関係者に目が向けられました。ESG要素を配慮する企業の価値は中期的に高まるとの見方からESG市場への資金流入の勢いが強まっており、21年もこうした流れが続くことになるでしょう。
<文:チーフESGストラテジスト 山田雪乃>
つのだよしお/アフロ